当該研究は、組織行動論もしくは社会心理学や社会学をベースとした理論的枠組みである組織的公正理論を、経営学的な観点から再検討し、より実務的かつ説明力の高い分析枠組みを構築することを目指している。具体的には、申請者がこれまでに蓄積してきた当該領 域に関する知見である戦略的な変数や人的資源管理といった変数を組織的公正理論に取り込んだ枠組みを構築することを目的としている。 本研究はこれまでに、①申請者の実施した過去のデータを再分析、②企業に対するインタビュー調査、③大量サンプルによるアンケート調査してきた。これらの調査・分析の結果、戦略の明示、浸透、および戦略に基づいた評価活動が組織的公正に影響を与えていることを示した。特に最終年度の研究では、大量サンプルによる重回帰分析・マルチモデル分析を実施することで、戦略と人事の一貫性の有無によって、戦略の明示が組織的公正に与える影響の仕方が異なることを明らかにすることができた。戦略と人事が適合している組織ほど、戦略の明示が手続的公正に与える影響が強かったのである。これらの研究の一部は、2017年度に、「戦略とHRMの一致が組織的公正に与える影響ー価値観が反映されたHRMの重要性」経営行動科学学会全国大会および「戦略と人事の適合関係と従業員の公正感」日本経営学会関西部会において発表している。また、本研究の知見を活用した報告書の一部として、申請者が監修した一般財団法人兵庫勤労福祉センター・兵庫県経営者協会・日本労働組合総連合会兵庫県連合会編『地域産業の活性化を通じた雇用創出 中間報告』がある。
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