研究課題/領域番号 |
15K03664
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
開本 浩矢 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90275298)
|
研究分担者 |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
井川 浩輔 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (80433093)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 創造性 / 人事考課 / 自己効力感 / 内発的モチベーション / イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトの3年目を迎える今年度は、本年度はとくに創造性の促進要因としてリーダーシップやモチベーション、自己効力感といった認知変数の影響についても文献レビューを行った。なぜなら、リーダーシップは創造性を評価する主体であるマネジャーがフォロワーに与える影響としては最も重要であること、自己効力感などの認知変数と創造性との関係性はこれまでの創造性研究でもっと研究蓄積のある分野であるからである。リーダーシップに関しては、たとえば、Montani, Battistelli and Odoardi(2017)によれば、上司による積極的な目標設定がフォロワーの創造的行動を促進すること、上司からのイノベーションに対する支持がこうした関係性を強化することが明らかにされている。また、自己効力感に関しては、Hsu and Chen(2017)などの研究により、上司や組織によって創造性の発揮が支持されることで、フォロワー、メンバーの心理的資本(自己効力感を含む4要素で構成される構成概念)が高まり、結果として彼らの創造性発揮が刺激されるという媒介仮説が定量的に検証されている。これまで創造性を規定する認知変数としては内発的モチベーションを取り上げる研究が多かったが、内発的モチベーションと創造性との関係性は未解明であった。こうしたブラックボックスに心理的資本という概念を取り入れることで、そのメカニズムが明らかになる可能性が指摘できるであろう。すなわち、自己効力感を含む心理的資本を如何に高めるかが創造性の促進に重要であり、創造性の評価にあたっては心理的資本の測定・評価が求められることも示唆されるだろう。さらに、こうした先行研究レビューを踏まえて、いくつかの定量分析を行い、別記の学術論文として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第三年度に当たる、今年度は文献レビューを中心に研究計画を着実に遂行できた。とくに創造性発揮の規定要因として心理的資本の探求を行い、創造性と人事考課との関係性にカギとなる構成概念が抽出できたことは大きな進展だと判断している。ここで得られた知見をもとに最終年度に向けて分析モデルの構築およびその検証による最終報告につなげていきたいと考えている。また、本年度は研究成果として、別記の学術論文を公表したことも進捗が順調であると判断した理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度が本研究プロジェクトの最終年度となるため、以下のような研究方針でプロジェクトの推進を予定している。まず、前述した研究概要で明らかになった心理的資本に関する包括的な文献レビューを行うとともに心理的資本に関する成果発表も予定している。これまでわが国では翻訳を含め心理的資本に関連する研究蓄積が稀であるため、その分野の研究の進展のために何らかの成果公表が必要だと考えている。次に、内発的モチベーションや心理的コミットメント、自己効力感といった中核となる認知変数に関する実証研究を行い、その成果についても報告する予定である。部分的には本年度の研究成果として公表しているが、最終年度に向けて分析途中のものや学術雑誌への投稿中のものを含めて最終聖火として取りまとめていきたいと考えている。さらに、本研究の重要なテーマである創造性と人事考課との関係性についての定量分析を行う予定である。特にビジネス分野におけるこうした分析はほとんど行われていないため、パーソナリティなどの属性変数をコントロールしたうえで、両者の関係性を統計分析することで明らかにしたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画から旅費の執行が効率的に行われたため、執行残が生じた。翌年度の執行にあたっては、最終報告に向けた研究者間の打ち合わせのための旅費や成果公表のための印刷費などの一部として活用する予定である。
|