本研究の目的は、日本とタイの労働者の公平感をめぐる認知の相違を明らかにすることによって、アメリカを中心に展開されてきた組織的公正理論の実践への応用性を高めることである。歴史的に日本との繋がりが深く、東南アジアで最も早くから日系企業が進出したタイにおいて、日本人の公平感との相違を知ることは、在タイ日系企業の人的資源管理の実践上、大きな意義を持っている。本研究においては、組織行動論、社会心理学、労働経済学等の近接他分野、他領域における知見を踏まえた理論的考察を行ったうえで、在タイ日系企業、タイ現地企業へのインタビューを中心とした定性的調査および大量サンプルによる定量的調査を実施し、これらの調査において収集されたデータを詳細に分析することによって、日本とタイの労働者がそれぞれどのような基準で公正を判断しているのかを明らかにすべく、3年間にわたり、次のようなステップで進めた。 まず、研究資料の収集および文献研究を行った。次に、こうした二次データの収集だけでなく、実際の人的資源管理制度、とりわけ評価・報酬制度に関する一次データ収集の必要性から、在タイ日系企業を訪問し、調査対象先となる数社の経営者および各社の従業員にもインタビューを行った。これをもとに設計した調査デザインに基づいて、本研究の目的に合致した調査票を作成した。また、タイ語に翻訳した調査票を現地の研究者に確認していただき、タイ人労働者に通じにくい表現などの修正点を多数挙げていただいた。その後、研究実施計画に基づいて、調査票の再検討を行ったのち、当該調査票を配付、回収した。すでに日本企業調査票の回収は完了しているが、在タイ日系企業の調査票については未回収のものがあるが、平成30年度前半にはすべて回収できる予定であることから、研究成果報告については、すべての調査票の回収後に論文として発表する予定である。
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