研究課題/領域番号 |
15K03685
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
臼井 哲也 日本大学, 法学部, 教授 (60409422)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新興国市場 / 資源ベース / ダイナミック・ケイパビリティ / リソース・リポジショニング / 企業特殊優位 / ビジネスモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本発の新興国市場戦略の一般理論の開発である。すでに提示したリソース・リポジショニング・フレームワーク(RRPフレーム)に基づき、本年はケースデータの収集ならびに実証研究を行った。これら研究成果は複数の学会誌において発表した。第一の論文は成都イトーヨーカ堂の中国市場進出の初期段階におけるリソース・リポジショニング仮説の検証である(秦・成田・臼井 2016)。成都イトーヨーカ堂は1996年の進出当初、日本市場では当たり前であったオープンディスプレイ、接客サービスの質、清潔さなどのノウハウを武器に成都市場を開拓している。まさにリソース・リポジショニングが初期的な成功の鍵となっている。またイオンモールのホーチミンシティへの進出においてもリソース・リポジショニング仮説が実証された(臼井・星田 2016)。テナントとの協働関係構築力、施設管理力、店内販促イベントの企画・運営力などが競争優位の源泉としてリポジショニングされて機能している。ここにおいてもリソース・リポジショニングが初期的な成功の鍵となっていた。 本年はこれら複数の実証研究を通じて、RRPフレームの理論化を一歩前進させることができた。本研究はその性質上、企業の動態的な活動プロセスを丁寧に理解する必要がある。複数の担当者に対するインタビュー調査と大規模な2次データの収集が活動プロセスの分析には欠かせない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、昨年度までに収集した1次データに基づき、実証論文を2本学会誌へ発表しており、概ね順調に研究が遂行されている。すでにもう1本の論文も入稿し、近日中に公刊される。当初懸念された企業を対象とした現場取材も人的ネットワークを活用し順調に進んでいる。今年度は中国、ベトナム、タイにおいて延11拠点を対象としてインタビュー調査ならびに現場観察を行った。これらの貴重な一次データ(定性データ)は論文として投稿できるように鋭意、分析の準備を進めている。 加えて、国内外の学会においても当該研究を報告し、フィードバックを活かしてフレームの修正を繰り返している。これら一連の作業は当初の予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度においては、理論フレームの開発、作業仮説の構築、3本の実証研究を取りまとめ、新興国市場戦略の一般理論として「リソース・リポジショニング理論」を提示したい。これまで収集した約10社・25拠点のケースデータに基づき1本の論文にまとめ、海外トップジャーナルへ投稿する予定である。海外トップジャーナルではケーススタディの採択はかなりハードルが高い。そこで、収集した一次データの分析方法に十分留意し(コーディング等)、大規模な2次データを追加して、頑健な方法論を採用する。 加えて、国際学会への参加と報告を通じて、著名な海外研究者へ事前の原稿チェックをお願いし、論理的一貫性と方法論の頑健性を高めたい。 尚、本年度は6月に北九州市で開催のAsia Academy of Managementならびに7月にドバイで開催されるAcademy of International Businessにおいて研究報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年2月3月に中国の現地取材にて収集したインタビューデータ(中国語使用分)のテープお越し並びにデータ整理作業が間に合わず、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通りの使用目的で速やかに執行する。
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