研究課題/領域番号 |
15K03686
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
近能 善範 法政大学, 経営学部, 教授 (10345275)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サプライヤー / 取引ネットワーク / 自動車産業 |
研究実績の概要 |
本年度は、各種公刊データをもとに作成したパネルデータを利用して、「顧客範囲」(Customer Scope)と「製品範囲」(Product Scope)のそれぞれの軸を通じた多角化が部品サプライヤーの企業業績に及ぼす影響について、定量的な分析を行った。 具体的には、日本の自動車部品サプライヤー企業が完成車メーカーとの間で行っている各部品取引を分析単位とし、まずは取引関係を大きく「既存取引」と「新規取引」の2つに分けた。また、後者についてはさらに、製品範囲と顧客範囲の二軸をそれぞれ「既存」と「新規」で2つに分け、4つの取引カテゴリーに分類した。その上で、後者の新規取引の4つの取引カテゴリーそれぞれ(「既存顧客・既存製品」取引、「新規顧客・既存製品」取引、「既存顧客・新規製品」取引、「新規顧客・新規製品」取引)と取引継続期間との間の関係について、生存時間分析の手法を用いて分析した。 その結果、「新規顧客・既存製品」取引>「既存顧客・既存製品」取引>「既存顧客・新規製品」取引>「新規顧客・新規製品」取引の順で、取引継続に有利であることがわかった。つまり、自動車部品サプライヤー企業にとっては、多角化に際して製品範囲の拡大よりも顧客範囲の拡大を優先すべきだということが明らかになったのである。 こうした成果は、組織学会(2016年6月)とThe ABAS Conference 2016 Autumn(2016年11月)で報告した後、Annals of Business Administrative ScienceのVol. 16 (1)にて概要を発表した。また、現在、他の学術誌にも投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査・分析については予定通り進んでいるが、ジャーナルに投稿した論文1本が現在審査中であり、またもう1本の論文がこれから学会報告を行う段階にあるなど、研究成果の公表については予定よりも遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2017年度)は、定量的な分析によって得られた結果をフィードバックし、また背後にあるロジックを含めて正確に解釈するために、自動車メーカーおよび主要サプライヤーへのインタビュー調査を精力的に行っていきたいと考える。 2018年度には、マッチング・ペア分析(観察したい変数以外の条件がほぼ等しい企業同士を組として、その後の歴史的推移を比較することで、観察したい変数が企業の中・長期的な成果に与える影響を評価する手法)を行う対象企業を選定し、社史・資料研究や、詳細な定量・定性的なデータの収集・分析を進めていく予定である。また、対象企業に対するインタビュー調査も行っていく予定である。 最終年度の2019年度は、前年度からの作業をさらに進めるとともに、調査・分析の結果をまとめ、国内外の学会での発表や、ジャーナルへの論文投稿を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力・加工作業(288,360円分)の発注・納品が予定よりも遅れ、次年度(2017年)4月の支払いとなったため、予算が余る結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年4月4日時点で、既に上記作業の納品を受け、同4月6日時点で、支払いの申請書および必要書類も研究開発センターに提出済みである。このように、前年度に余った予算については、4月初めに支出手続きが完了している。
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