研究課題/領域番号 |
15K03689
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 英夫 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (20220395)
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研究分担者 |
大木 裕子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80350685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非競争 / ニッチ戦略 / 協調戦略 / ビジネスモデル / バリューチェーン |
研究実績の概要 |
研究の初年度は非競争の戦略として、ニッチ戦略(質的ニッチ、量的ニッチ、質的・量的ニッチ)を探究したが、2年目は他社のバリューチェーンに入り込む協調戦略に焦点を当てた。協調戦略は、古くは組織論の分野で研究されてきたが、そこでは資源の相互補完という意味合いが強かった。Yoshino and Rangan(1995)は提携を4つの部類し、その中で、同一産業に属し競合関係にある水平的企業同士による提携を位置づけた。 その後の戦略論の分野においては、Brandenburger and Nalebuff(1996)やPorter & Fuller(1986)などにより、競合企業との協調という形が、明確に位置づけられるようになった。本研究は、戦略論のこの流れの延長戦上にあることが改めて確認された。 本研究では、競合企業のバリューチェーンの中に入り込んで安定的な協調関係を築き、それを維持している日本企業の事例を収集し、その中で4社の事例(キュービタス、セブン銀行、ラクスル、ホギメディカル)について、詳細な事例研究を行った。 事例研究の結果、安定的な協調関係を構築するためには、自社のバリューチェーンを一部撤退することから、短期的な資源の補完ではなく、長期的な視点で相手企業、機能の選定を行わなくてはならない。また、協調戦略をより強固にしていくためには、バリューチェーンの前後工程に事業を拡大するのではなく、バリューチェーンに入り込む企業数を増やす事が重要である。これらの詳細は、早稲田大学の紀要に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非競争のビジネスモデルの研究に関し、今年度は事例研究の蓄積を行った。研究代表者である山田が刊行した事例としては、セブン銀行、ソニー損保、エプソン、成田空港などが挙げられる。これらの事例研究から、競合企業が同質化しにくい仕組みなどが明らかになった。一方、非競争の理論的枠組みに関しては、組織論、戦略論を中心になされてきた協調戦略の先行研究をまとめ、紀要に論文として掲載した。 他方研究分担者の大木は、主に産業集積地のものづくりのビジネスモデルの分析を進めてきた。特に着目しているのは、非競争のビジネスモデルを構築するためのビジネス・プロデューサーの役割であり、こうした問題提起の著書『産業クラスターのダイナミズム~技術に感性を埋め込むものづくり~』を2017年に発刊し、シリコンバレーと日本・中国の産業クラスターの事例をまとめた。 これらを土台として最終年度では、競争しない戦略について、研究代表者と研究成果をまとめ、発表していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度である今年度は、ニッチ戦略と協調戦略を包括的にとらえられるフレームの構築を目標とする。 またニッチ戦略と協調戦略が、一時的な、もしくは過渡期の戦略にとどまるのであれば、持続的成長が望めないことから、いかにして持続可能な戦略としていくかを考えなくてはならない。ニッチ戦略の場合は、マルチ・ニッチ戦略として事業を拡大していく途を示したが、両者に共通する戦略として、コスト優位(ニッチ戦略はコストがかかるという定説があったが、これはゼロベースで考え直す)と、他社に同質化されない仕組み(競合優位性)に焦点を当て、持続可能な戦略を探究していく。 研究成果の主な部分は、現在の所、単行本としてダイヤモンド社から刊行することを予定しており、出版社との調整は既に行っている。また論文の形で発表することも、同時進行で行う予定で進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り研究を進める中で、旅費が少なく、物品費購入が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品、交通費等で支出する予定である。
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