研究実績の概要 |
平成27年度においては, 企業の技術競争力を有効特許件数, 被引用件数, 特許の質(技術利用の排他性)の3尺度で評価し, それぞれの尺度が企業価値(あるいは株式価値)にどのように結びついているのか, すなわち特許情報の価値関連性について, 株価データを用いて検証した. この研究の成果については, 複数の学会での発表後に投稿・審査を経て, 井出真吾, 竹原 均 (2016), 「株式市場における特許情報の価値関連性に関する実証分析」,『現代ファイナンス』No.37, 3-17. として刊行された. また特許情報が企業収益性と株価に浸透する過程についても分析し, 以下の論文として取りまとめ, 平成28年5月に開催される日本ファイナンス学会大会, 日本ディスクロージャー研究学会研究大会における研究発表が決定している. 井出真吾, 竹原 均 (2016), 「特許情報の株価への浸透過程の分析」. さらに当初は平成28年度に実施の予定であった株式所有構造と研究開発・技術競争力の関係についての分析に関しても, これを平成27年度に前倒して実施した. その結果については, すでに以下の英文のワーキングペーパーとして取りまとめ, 国際学会での研究発表の機会を検討中である. Shingo Ide, S. Ghon Rhee and Hitoshi Takehara (2016),"The heterogeneity of institutional ownership and innovation in Japanese firms," Working Paper.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては, 27年度に前倒しして実施した株式所有構造とコーポレート・院オベーションに関する研究について, 国際学会での発表を行い, 論文の改訂を続けていく. またSuto and Takehara (2014)は, 日本企業のCorporate Social Performance (CSP)とCorporate Financial Performance (CFP)との関係について分析し, CSPの中でも特に雇用関係(Employee Relations)が企業の収益性と強い正の相関関係にあることを明らかとしている. 同研究で使用されたEmployee Relationsの評価項目には, 社内教育制度, 留学制度, 職務上の発明に対する報奨制度等が含まれており, 高い技術競争力を持った企業の収益性は, 良好なEmployee Relationsにおいて達成されたイノベーションにより説明される可能性を持つ. この研究課題に関しても, 年度内の分析の終了と論文の執筆を目指す.
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次年度使用額の使用計画 |
現在, 平成28年度中に開催される学会に発表を申し込み, 審査結果を待っているところであり, 発表が認められた場合には積極的に国際会議において当該研究課題に関する成果を公開していく. 平成28年度に繰り越した使用額に関しては, このための海外旅費に充当する.
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