研究実績の概要 |
平成28年度に関しては, 特許情報として数値的に把握された企業の技術競争力と株式所有構造についての研究を実施するとともに, 研究計画初年度(平成27年度)に続いて, 特許権の株式市場における評価についても研究を実施した. まず技術競争力と株式所有構造の関係については, (1)同族企業における研究開発活動と技術競争力の獲得, ならびに(2) 株式所有構造の異質性と技術競争力の2点について実証研究を実施した. (1)については国内, 国際学会での研究発表後に現在, 英文査読誌に投稿し, 初回の査読結果を待っている. (2)については, 研究発表後に受けた指摘をもとに論文を改訂中であり, 平成29年度内の英文査読誌への投稿を目標としている. 次に特許情報の株式市場における評価については, 技術競争力の変化が財務諸表と株価に反映される過程について分析を行った. その結果, 特許情報内容の解釈が困難であることから技術力の会計数値への反映には2年程度のラグが存在し, さらに株価は会計数値の変化を市場参加者が確認した後に反応していることが明らかになった. この研究に関しては, 既に『証券アナリストジャーナル』に最終稿が掲載されている. 現在は同研究で得られた知見を基にしつつ, 将来の純営業資本利益率, あるいは自己資本利益率の予測モデルに技術競争力を取り込んだ新たなモデルの構築を行っている. この研究に関しては, 現在(平成29年4月)論文を執筆中であり, 6月に予定している国内学会での研究発表後, 年内に和文査読誌に投稿の予定である. 最後に当初予定していた日本企業の研究開発活動・技術開発力と企業のCSR活動, 特に従業員との関係については, 現在, 研究を実施中であるが, 研究計画期間内には何らかの成果が得られることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って進んでおり, 研究成果の公表, ならびに査読付き学術誌への投稿, 掲載についてもこれまで問題は無い. ただし当初計画において予定していたコーポレートイノベーションと企業の社会的責任(Corporate Social Responsibilities, CSR)の関係の分析については, 平成28年度中に初期の分析を終了するはずであったが, 若干の遅れが出ており, このため「(2)おおむね順調」という自己評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
株式所有構造と技術競争力の関係の分析については, 日本企業の垂直的・水平的系列と株式持ち合いが経営戦略に与える影響についての再考が必要なため, 平成29年度については研究協力者を追加することを予定している. 実証分析用の特許情報データ, 商標権データ, CSRデータについては, それらの整備を継続中であり, 若干の遅れが生じているものの平成29年度の研究活動に支障が出るものではないと現時点では判断している.
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の組織改編に伴い, 8月末に異なるキャンパス間で研究室が移動となり研究環境が大きく変化したことから実証分析用サーバーの導入を次年度に延期した. 加えて2016年10月よりビジネススクールの教務主任を務めることとなり, 校務の負担が増加し, 28年度交付申請において予定していた国際会議への出席が不可能となった. このため海外旅費支としての出予定を次年度に繰り越さざるを得なかった.
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