研究課題/領域番号 |
15K03697
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中村 志保 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20389191)
|
研究分担者 |
安藤 直紀 法政大学, 経営学部, 教授 (50448817)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 国際人的資源管理 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究成果は次の二点である。 日本企業の海外子会社のパネルデータセットを用いて、海外子会社の人材戦略と子会社業績との関係を分析した。先行研究では、海外子会社の人材を現地化した場合、あるいは本国からの派遣者を増やした場合に、子会社の業績が改善するかどうかが分析されてきたが、多くの研究は、なぜ子会社を現地化するのか、あるいは派遣者を増やすのか、という点を考慮してこなかった。現地化が子会社の業績を改善するという結果が出ても、現地化が有利な状況のもとで現地化したため(状況のもとで最適な行動をとったため)、子会社の業績を改善させたという可能性を排除できない。ある一定の状況のもとで、現地化した場合としなかった場合を比較しないと、どちらが良いかということを言うことはできない。このようなバイアスの影響を軽減するために、propensity score によるマッチングを行い、分析を行った。分析結果から、現地化した場合も、本国からの派遣者を増やした場合も、海外子会社の業績が改善することが示された。また、現地化も、派遣者の増加もしなかった場合、子会社の業績が悪化することが示された。変化していくビジネス環境の中で適切な行動(現地化や派遣者の増加)をとった場合には、子会社は業績に正の影響を受けるが、何もしなかった場合には負の影響を受けることが示唆された。 一方、事例研究を行った結果、現地をを進める企業とそうでない企業では、核となる技術の開発が本社にあるか海外子会社に移転可能かによって、人材戦略が異なる可能性があることが分かった。この結果は、一部の事例研究から明らかになったことであるため、今後は調査対象企業を増やし、理論を精査する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は当初の予定通り、事例研究(第一次インタビュー調査)を中心に研究を進める一方で、パネルデータセットを用いて海外子会社の人材戦略と子会社業績との関係を分析した。その成果を論文にまとめ、国際学会で報告し、他の研究者と意見交換を行なった。また、その一部の成果をテキストにまとめた。このような意味で、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまで行った事例研究のデータを整理し、命題及び仮説の見直しと理論的枠組みの再検討を行う。その上で、質問票調査による定量分析を行う予定である。 具体的には、平成28年度に行ったオムロンでの調査結果を基に、理論枠組みを見直し、村田製作所、シャープ、パナソニック等で同様の調査を行いながら、さらに理論的枠組みを精査する。そして、これらの結果を基に、質問票を作成し、定量分析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年8月25日付で産休又は育休による中断(平成28年9月11日~平成30年3月31日)の申請を行い、承認されたため、次年度使用額が生じている。ただし、各年度に行う予定である研究計画は順調に進んでおり(平成28年度前半分まで)、平成31年度以降、各年度に予定していた研究内容や方法を延長して実施する予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は事例研究を中心に研究を進める予定であった。延長申請後の平成31年度よりこの続きを実施する予定である。具体的には、平成31年度の前半は、当初平成28年度後半に予定していた事例研究を中心に進め、平成31年度後半は質問票調査の準備を進める。事例研究には、インタビューのための旅費、インタビュー内容のテープおこし、企業の資料整理などの費用、質問票調査にはデータ解析ソフト、質問票の郵送料などがかかる予定である。
|