研究課題/領域番号 |
15K03704
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西村 成弘 関西大学, 商学部, 教授 (70511723)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 特許管理 / 研究開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは,企業による知的財産管理が研究開発の成果,とくにその代理指標とされる特許件数にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。 この目的を達成するため,第1に,アメリカ企業の事例としてGE社とウェスチングハウス社を取り上げ,両社の研究開発組織,特許管理,そして特許出願傾向の関係を主に特許書誌データ分析によって明らかにした。結果,特許管理の集中化/分散化,特許の国際取引の程度の違いが両社の特許出願傾向に影響を及ぼしている可能性を指摘することができた。なお,この成果はヨーロッパ経営史学会・アメリカ経営史学会合同会議(マイアミ)において発表した。 第2に,マクロ的な観点から,日本とアメリカにおける特許管理の形成と展開の特徴が両国の歴史的な特許出願傾向の違いを生み出していること,したがってイノベーションの指標として特許データを用いるときは,少なくとも各国における特許管理の発生と特徴を考慮する必要があることを,国際比較分析によって明らかにした。この成果は,アメリカ経営史学会年次会議(ポートランド)において発表し,国際的な討議に付すとともに,討議により今後の研究の進め方に対する有益な情報を得ることができた。 また,研究計画に従い,RCA社における特許管理の特徴を明らかにするため,セントローレンス大学(NY州)にて資料調査を行い,主に取締役会議事録の資料を収集した。加えて同社の特許管理を計量的に明らかにするため,国立国会図書館等において資料調査・収集を行い,データベースを作成した。これらの資料およびデータについては,今後の研究に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の発表については当初の計画以上に進展しており,特許管理がイノベーション指標とされている特許出願件数や書誌データにどのような影響を及ぼしているかについて,マクロ分析ではあるが研究発表を行い(ポートランド),国際的な討議に付すことができた。また,当初計画していたRCA社に関する資料収集と特許データベース作成については,おおむね計画通り実行することができた。他方で,デュポン社による特許管理を分析するための調査は,先行研究(2次資料)の検討にとどまっており,1次資料の調査までは行えていない。この点は,遅れ気味であるが,その理由は,ポートランドにおける研究発表を優先したため,この時期に予定していた現地(アメリカ)における資料調査を遂行できなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き,アメリカの代表的企業における特許管理の分析を行う。先に記したデュポン社のほかに,研究計画にあるIH社やシンガー社についても調査・分析を行う。また,平成28年度からは,日本企業における特許管理の形成と展開についての研究に着手する。主としてヒアリングによる調査を行い,同時に書誌データベースの作成を分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
春期休暇を利用してBHC会議(ポートランド)と同時にデュポン社資料調査を計画していたが,日程上,前者のみの計画遂行となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカの代表的企業(デュポン社,IH社,シンガー社)における特許管理の分析を行う。また,日本企業における特許管理の形成と展開についての研究に着手する。主としてヒアリングによる調査を行い,同時に書誌データベースの作成を分析を行う。
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