研究課題/領域番号 |
15K03705
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上野 恭裕 関西大学, 社会学部, 教授 (30244669)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 大企業 / 経営戦略 / 経営資源 / ペアレンティング / 組織構造 / ファミリービジネス / 日本的経営 |
研究実績の概要 |
企業の経営戦略、事業再構築と組織構造、組織改革に関する文献調査を行い、資料の収集に努めた。それらの資料を整理することにより、大企業の経営戦略、特に多角化戦略とそれを実施する組織構造についての問題点の明確化を行った。それらの文献研究を元に、論文「企業の競争優位と経営資源論」を同志社商学に投稿し公表した。これらの研究成果を元に国内の経営学会や海外の経営学に関する国際学会で研究報告を行うことにより、国内ならびに海外の研究者と広く意見交換を行った。その結果、日本企業の基本的な競争優位をファミリービジネスの観点から確認するとともに、同時に日本企業が抱える課題を海外の企業との比較の観点から明らかにすることができた。日本企業はこれまで、日本的経営の背景にある企業のファミリー性の観点から競争優位を獲得してきたのに対し、そのような日本的経営の喪失によって競争優位の喪失が起こっていることが明らかとなってきた。また、2017年度は新たに入手した統計資料を基に、日本企業の組織構造と財務成果の関係を分析しなおすと同時に、日本企業の組織改革に大きな影響を与える企業制度、企業形態、コーポレートガバナンスの構造を明らかにするために、大株主の構造についてのデータを整理し、それらをもとに,質問票調査の準備を進めた。 さらに海外の研究者を通して欧米企業の経営戦略と組織改革の情報を収集した。それによると欧米の企業はこれまで資本の論理に基づいて、事業の再構築を進めてきたが、日本的経営のよさを取り入れて事業活動に積極的にかかわるようになり、ペアレンティング優位を実現することが多くなっていることが明らかとなってきた。今後は単なる事業の組み換えではなく、ペアレンティング能力を生かしたマネジメントのための組織改革が必要であること明らかとなってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度中止となった学会発表を、2017年度は実施することができ、国際学会で発表し、多くの研究者と情報交換を行うことができた。その結果、研究モデルの再構築が必要になり、質問票調査の実施を次年度へと繰り越したため、仮説の検証作業に若干の遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
日本企業の事業再構築、組織改革に関する文献を読み込み、論点を整理すると同時に、日本企業の組織改革の事例を追加的なヒアリングにより継続して収集し、仮説の再構築を行う。また、海外企業の組織改革に関してもさらに情報を収集するためにヒアリング調査を継続実施し、それらを元に、企業の事業再構築に関する仮説を修正し、理論構築を行う。インタビュー調査と海外の研究者との情報交換により、理論の再検討を行い、質問票調査を実施し、大量データによる分析を進める。またそれらの研究成果を学会報告や論文で発表することにより研究成果を公表し、研究を完了させる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査研究を実施する過程で、理論構築のためのモデルに修正が必要となり、質問票調査の実施を延期したことにより、次年度使用額が生じた。海外研究者と議論を重ね、新たなモデルを元に仮説の再構築を行い、質問票調査を実施する予定である。そのための調査実施費用として研究費を使用する予定である。
|