本研究では文献調査、企業への聞き取り調査、質問票調査を実施し、企業の事業再構築と組織改革についての分析を行った。 文献調査では、日本企業が事業再構築に伴い組織構造を大きく変化させていることが明らかとなってきた。M.E.ポーターが日本企業には戦略がないと指摘したとおり、グローバルな競争環境の変化に伴い、日本企業は競争力を失ってきた。しかしながら近年は組織改革を伴う事業再構築が盛んであり、日本企業の業績は回復傾向にある。しかしながらその多くは表面的な事業の再構築であり、不採算事業からの撤退が中心であり、業績改善も一時的である。純粋持株会社の解禁に伴うアメリカ型経営の導入により、リストラクチャリングが積極的に行われ、日本企業の競争力が失われていったといえる。 そのような分析を踏まえ、2019年2月に東京証券取引所一部上場企業に対して質問票調査を行った。調査結果によると、回答企業の約半数が過去3年以内に組織構造改革を行っており、日本企業が引き続き積極的に組織改革を進めていることがうかがえる。組織形態の種類別比率を見ると、事業部制組織と事業本部制組織が圧倒的多数を占めるが、職能別組織もいまだ重要な地位を占めており、カンパニー制やマトリックス制など新しい組織形態や、事業部制と職能別組織の混合形態も一定数存在することが明らかとなってきた。 しかしながら純粋持株会社制を導入している企業はほとんど存在せず、ヨーロッパで普及している純粋持株会社は日本には根付いていない。2000年代前半は一定数の企業が純粋持株会社へ移行するという傾向がみられたが、2010年代に入り、同制度を解消する企業も多くみられた。むしろ大企業よりも中堅企業に多く見られる組織形態となってきており、大企業の組織形態として、純粋持株会社の有効性には疑問があることが明らかとなってきた。
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