研究課題/領域番号 |
15K03706
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
伊田 昌弘 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (50223079)
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研究分担者 |
多田 和美 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (50582805)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 越境EC / 国際化プロセス論 / ボーン・グローバル企業 / 国際天猫(Tモール) / アマゾン / eBay / 国際B2C |
研究実績の概要 |
本研究は、これまであまり研究が行なわれてこなかった「越境EC」という新しい現象に注目し、その構造を明らかにすることで、国際ビジネス分野における理論の発展を企図するものである。我々は、この問題を消費者視点から扱っている。 さて、本年度(平成28年度)は、GDP、国内B2C、ネット普及率などの指標から上位6ヶ国(中国、アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、韓国)を選定し、各国における消費者調査を行なった。この6ヶ国の合計はGDPで世界の約65%、国内B2Cの85%に達するものであり、越境ECの大半の部分を説明できるものと考えられる。 調査は、平成28年7月に行われ、サンプル数は各国200、男女半々、年齢均等割で行った。その結果、越境ECは中国で最も進んでおり、逆に日本で一番遅れていることが判明した。また越境EC経験者は中国で69%、日本で27%であり、購入金額の一人平均では中国は日本の3倍に及んでいた。 さらに我々は、次の5つの事実を発見した。①越境ECは必ずしも国内B2C(及びGDP)の市場規模に依存しておらず、その発展の度合いは説明できない。②越境ECを利用しない消費者は「安全性」を重視し、利用する消費者は「個人的趣向度」が大きい。③「越境ECは、地理的精神的に近い国から始まる」という従来からの国際化プロセス論の命題は越境ECにおいても確認される。④越境ECにおいて、早期に国際化を達成した企業(ボーングローバル企業)は単体の大企業とは限らない。そして、消費者が認知する海外サイトには、世界中の中小企業が参加するECモールが必ず含まれることになる。⑤越境ECによって実際に購買される商品は、いくつかの類型を持つ。 以上を英語論文にして、Academy of International Business(AIB)に投稿したところ、採択されたので、2017年世界大会で報告することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度、6ヶ国調査と分析がかなりの進展をみせたため、英語論文にしたところ、Academy of International Business(AIB)世界大会(2017年ドバイ)における採択を受けた。そこで、国際的な場において海外の研究者からの評価や知見を得るため、5年目に予定していた国際発表出張を3年目に繰り上げることとした。
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今後の研究の推進方策 |
英語論文の査読結果を受け、国際的な研究課題として、Academy of International Business(AIB)世界大会(2017年7月ドバイ)で発表を行うことが確定している。 また、本研究に興味を持たれたTerry WU教授(カナダ・オンタリオ工科大学)からの招聘もあり、今後はさらに精緻化した分析と理論化を行い、ジャーナルへの投稿準備に当てる。
その際、5つの仮説と命題の検証に当たって、テーマが多岐になるため2~3本程度論文が増える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)6か国調査(楽天リサーチ社利用)実施に当たって、当初予算が増加したため。6ヶ国は、中国、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国、日本。各国サンプル数200(男女半々、年齢均等割)質問項目11、データ数は、各国単純集計2,200(=11×200)と属性クロスセッション集計で8,800(=11×200×男女×年齢)であり、6ヶ国合計は66,000である。
(2)データ分析にあたり,統計解析ソフトSPSS使用。ただし、SPSSは標準(ベース)の他に多変量解析パス(因果関係)のため別売のAMOSも購入。これにより、未知の変数による因果関係の解析が可能となったため、越境ECに関わる命題の検証と発見に役立つこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗状況が予定よりも順調なため、次年度に国際学会発表を行う。また、次々年度に予定されている第2回調査については、研究予算との兼ね合いで調査国を絞り込む可能性あり、とする。
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