研究課題/領域番号 |
15K03706
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
伊田 昌弘 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (50223079)
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研究分担者 |
多田 和美 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (50582805)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 越境EC / 国際化プロセス論 / ボーン・グローバル企業 / 価格と差別化 / 6ヶ国消費者の違い / B2B2Cモデル / KOL(Key Opinion Leaders) |
研究実績の概要 |
2017年度は、前年(2016年)に実施した海外6ヶ国調査(日、米、英、独、中、韓)の分析結果を踏まえ、5つの理論命題を提出することができた。5つの命題は以下の通り。①越境ECの発展は一人当たり国内B2Cに依存して、3次多項式上で決定される、②越境ECを利用しない消費者は不確実性を重視し、利用する消費者は個人的趣向度が大きい、③国際化プロセス論の新旧バージョンのうち、旧バージョン(Johanson,& Vahlne,1977)「地理的精神的に近い国から国際化する」の方が、新バージョン(Johanson,& Vahlne,2009,2013)「ネット人口の多い国から順番に国際化する」よりも選好される、④越境ECにおいては、早期に国際化を達成する企業であるボーングローバル企業や既存のニッチに関係する中小企業が必ず含まれる、⑤越境ECによって実際購入される商品はいくつかの類型を持つ、である。(1)海外学会での報告 AIB(Academy of International Business) 2017 Annual Meeting,Dubai,UAEにおいて、越境ECに関する5つの命題の検定を行い、併せて理論上の考察を発表した。(2)日本国際経済学会での報告 我々の研究のうち、特に経済学分野に関わった第1命題および第3命題を中心に報告を行い、また分析に用いた検定方法と関数形(6つの変数によるロジェスティック回帰分析、因子分析等)に関して、報告を行った。(3)国際ビジネス研究学会での報告 上記(1)と(2)以外に発見された「中国人消費者」の特異な構造について報告した。すなわち、越境ECが世界で最も進んでいるのは米国ではなく中国であり、消費者構造においては、正規分布ではなく、Jカーブ(10段階分位において、平均値・中央値が6.0と高く、最頻値が最大10)を描くことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最終年度(5年目)に予定していた海外学会報告(Academy of International Business)がレフリーを通過したため、前倒しで行なうことができた。 また、国内の3つのメジャー学会(国際ビジネス研究学会、日本国際経済学会、多国籍企業学会)の全国大会において報告を行うことができた。
当初の研究予定であった理論分析、実証分析を終え、学会発表もできたため、この成果を踏まえ、さらにその途上で発見された問題と我が国における越境ECの可能性分野(化粧品、日本酒など)についての研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
第1回目(2016年)に続き、第2回目の国際6ヶ国調査を実施し、2時点間における変化を分析する。
さらに、今後、これまでの成果を踏まえて、以下の解明を行う。①KOL(Key Opinion Leaders)の存在:越境ECに関して、ネット上で影響力を持つ個人=KOLが商品需要に影響力を持つことが散見される。企業はどのようにKOLを取り込んでいるのか、解明する。②越境ECに関して、実は「国際B2C」というというよりも「国際B2B2C」といった形態、特に「真ん中のB=仲介業」の役割が大きい。これを理論的に把握する必要性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、当初研究計画において、第2回目の6か国調査(日、米、英、独、中、韓)が必須のものとして予定されており、すでに実施した第1回目調査の経費から鑑みると、できるだけ次年度予算を残す必要があったためである。 なお、本研究において、異なった2時点間の調査は、「越境EC」の進展スピードの各国指標を得る上で、最重要なものと判断している。
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