本年は研究最終年であった。文献研究から設計された分析モデルに従い調査票を設定し、大規模な質問票調査を実施した。調査は、2018年1月12日から5月14日の期間で、兵庫県・大阪府等に立地する14の社会福祉法人・医療機関で従事する介護職員・看護師・リハビリテーション専門職を対象に質問票調査によって実施した。調査票は1071通配布され、そのうち884通が回収された。回収率は82.5%であった。回収された884通のうち、明らかに信頼性の低い質問票が21通含まれていたので、分析からはそれを除外し、残りの863通を有効回答とした。有効回答率は、97.6%であった。 分析の結果、介護・看護・リハビリ職が職務として実践する「感情労働」が、統計的に有意に、組織定着を規定していることが明らかとなった。このことは先行研究の結果と整合的であるが、感情労働が包含する多様な下位因子によって、組織定着の予測の仕方が異なることが確認された。この他にも、職務満足等の心理的アウトカムも従属変数として分析されているが、全て仮説どおり、有意に影響しているという結果が確認された。 またこれらの因果関係の間を調整するモデレータとして、本研究では「レジリエンス」が策定された。分析の結果、主にソーシャル・サポート因子が、これらの間の関係を調整する要因として確認された。 今後の研究課題としては、感情労働が有するより多様な側面を意識した測定尺度を開発すること、モデレータとしてレジリエンス以外の心理的リソースを検討することが認識された。
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