平成29年度は、①支援機関の重層的なネットワークを通じた貧困者の支援の可能性について、②貧困者ひとり一人の自助努力による自立のための動機づけとキャリア開発に対する支援について、の二つのテーマについて重点的に研究を行った。両方のテーマについて、年間を通じて文献調査を行うとともに、つぎのような現地調査を実施した。①については現地調査として8月にフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学(マニラ首都圏)とサン・カルロス大学(セブ市)にて開発経済学を専攻する研究者との面談を行ったほか、NGO先進国であるフィリピンにおけるNGOの認証制度を司るPCNCを訪問し、認証制度の概要(背景、目的、歴史、現状、課題)を調査するとともにNGOのネットワーク化とそれによる支援の「点」から「面」への展開の可能性について議論を行った。またセブ市では、日本のNPO法人(セブンスピリット)との面談を行った(面談内容は活動内容および主として②に関する議論であった)。②については現地調査として3月にアテネオ・デ・マニラ大学にて組織心理学の専門家2名との面談およびソーシャルビジネスの専門家グループとワークショップを行い、貴重なコメントおよび今後の研究協力の快諾を得た。また、日本のNPO法人(ユニカセ)で、動機づけとキャリア開発についての講義を行い、今後事例研究の対象として協力していただくこととなった。以上の研究成果を、3本の論文にまとめ、学会誌等に報告を行った。
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