研究課題/領域番号 |
15K03722
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 栄作 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (10366940)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 商学 / 購買行動モデル / 来店間隔モデル / カテゴリー購買生起モデル / 品揃え変更の影響 |
研究実績の概要 |
本研究は,相対的に研究蓄積の手薄な買物出向や売場探索に関する購買行動研究の拡充を図ること,ならびに買物出向とカテゴリー購買生起の相互依存的関係を捉える購買行動モデルを構築することを通じて,消費者の購買行動プロセスの理解を深めることを目的として取り組んでおります。 本研究では,店舗内空間行動モデルに消費者の異質性の構造を組み込む研究,買物出向とカテゴリー購買の相互依存的関係に関する文献調査収集と整理,来店間隔と購買経験カテゴリーの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの研究の3つが,主な研究活動となっております。 平成30年度は,前年度に引き続き実証分析用データ利用の制約から特に3番目の研究活動を優先して進めて参りました。平成30年度の研究活動では,小売店舗における品揃え変更の影響を考慮した既存のカテゴリー購買生起モデルを拡張し,同影響の消費者間異質性を考慮することを可能にしたカテゴリー購買生起モデルを提案しました。同モデルに関する実証研究の成果をまとめた論文は査読プロセスを経て受理され公刊予定となっております。さらに上記モデルを複数カテゴリーの同時購買に対応させて拡張し,異なるカテゴリーにおける品揃え変更の交差効果を評価可能とする新たなカテゴリー同時購買モデルの提案も行っております。同研究の成果に関しては,日本マーケティング・サイエンス学会第104回研究大会において報告致しました。その後現在は,同モデルの更なる精緻化を行うために必要となる実証研究用データの加工・整備の作業を進めているところであります。実証研究用データの整備が完了し次第,同モデルの精緻化に向けた実証研究等を進めて参る予定でおります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の3つのサブテーマ,店舗内空間行動モデルに消費者の異質性の構造を組み込む研究,買物出向とカテゴリー購買の相互依存的関係に関する文献調査収集と整理,来店間隔と購買経験カテゴリーの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの研究の中で,2番目の文献調査収集と整理はおおむね完了し,公刊済みおよび公刊予定の論文内に記載し公表を行っております。 3番目の来店間隔と購買経験カテゴリーの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの研究に関しては,実証分析が中心となる研究活動の特性上,データの入手とその利用期限が制約となります。当初は平成27年度のみ利用可能な研究用データを用いて研究活動を進め,その後平成28年10月に利用期間2年間の新たな研究用データを入手し研究活動を進めて参りました。その結果これまでに,品揃え変化の影響を考慮した来店間隔・客単価・カテゴリー購買生起のモデル,ならびにカテゴリー間の品揃え変更の交差効果を考慮した同時購買モデルに関する実証研究の成果を,学会等で報告するとともに,複数の論文にまとめ公刊ないしは公刊予定とするに至っております。しかしながら,データの加工処理および推定処理に想定以上の作業工数を要し,その結果,データの利用期限である平成30年9月においても同サブテーマの研究活動を完了するまでには至らず,利用期間をさらに2年間延長した上で関連する研究活動を現在も継続しております。 以上のように,2番目のサブテーマが完了し,3番目のサブテーマにおいても研究が進み複数の成果を公表するに至っているということから,それらに関してはおおむね順調に研究が進展しているものと考えておりますものの,1番目のサブテーマに関する研究活動を後回しにせざるを得ない状況にあり,本研究課題全体としての進捗はやや遅れていると判断いたしました。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の3番目のサブテーマである来店間隔と購買経験カテゴリーの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの研究で利用するための実証分析用データの利用期限が当初は平成30年9月までとなっており,実証分析データの確保が懸案となっておりました。その利用期限の延長が可能となり,同サブテーマに関する研究を継続する環境が整いました。 これにより次年度も,同実証研究用データの制約を考慮し,引き続き来店間隔と購買経験カテゴリーの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの研究に関する活動を優先して行う予定でおります。具体的には平成30年度までの研究で提案を行った,品揃え変更の影響に関する消費者間異質性を考慮したカテゴリー購買生起モデルや,異なるカテゴリーにおける品揃え変更の交差効果を考慮したカテゴリー同時購買モデルの精緻化に向け,分析対象店舗を増やして実証研究を進めるとともに,来店間隔モデルとカテゴリー購買生起モデルの統合に向けた実証研究についても取り組んで行っていく予定でおります。なお,同サブテーマの研究活動には少なくとも更に6か月程度の期間が必要と予想しておりますため,その後に店舗内空間行動モデルに消費者の異質性の構造を組み込むための研究として初期モデルのシミュレーションによる挙動確認等の研究活動に取り組むことを想定しております。
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