本研究は,消費者の購買行動プロセスに関して相対的に研究蓄積の手薄な買物出向や売場探索に関する研究の充実を図るとともに,購買行動の理解を深めることを目的として取り組んだものである.平成27年度は,関連する文献収集と整理,および来店間隔と購買経験カテゴリの品揃えの関係を捉える購買行動モデルの構築と実証分析を進めた。平成28年度も文献収集と整理を継続しつつ,買物出向とカテゴリ購買の相互依存的関係に関連する購買行動モデルの構築と実証分析を進めた。その成果は関連学会で報告するとともに,論文「実務における品揃え操作影響評価のための購買行動モデルの拡張と実証分析」(『流通情報』第48巻第4号)として発表した。平成29年度は,小売店舗における品揃え変更が来店間隔や客単価,カテゴリ購買生起に及ぼす影響を捉えるための購買行動モデルを提案し,その実証分析を行った。その成果は,関連学会で報告するとともに,論文「品揃え操作の影響の時間的変化に関する研究」(『流通情報』第50巻第1号)として発表した。平成30年度は,既存のカテゴリ購買生起モデルを拡張し,小売店舗における品揃え変更の影響の消費者間異質性を考慮可能にしたカテゴリ購買生起モデルを提案し,その実証研究を行った。その成果は,関連学会で報告するとともに,論文「品揃え変更がカテゴリ購買生起に及ぼす影響の顧客間異質性」(『流通情報』第51巻第1号)として発表した。平成31年度(令和元年度)は,来店行動とカテゴリ購買生起モデルの統合モデル,ならびに消費者間異質性の構造を組み込み込んだ店舗内空間行動モデルの実証研究を進めた。その成果をまとめた論文の投稿は完了し査読結果待ちとなっている。以上のように研究期間全体を通じて複数の論文を発表し,目的としていた研究蓄積の充実と購買行動理解の深化に一定の貢献を果たすことができたものと考える。
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