最終年度に行った研究は、次の通りである。一つ目は、値引きが提供されている状況における高品質低価格訴求の影響を高品質の訴求と低価格の訴求との比較から調べるものである。値引きが実施されるタイミングによって注意を向ける手がかりが異なると予想し、タイミングを操作した実験を行った。データ分析からは予想と一致した結果が得られた。二つ目は、同一ブランドであってもサイズによって消費者の知覚品質が異なる現象を提示した先行研究を踏まえ、サイズが手がかりとなる状況がどのようなコンテクストで発生するのかを分析した。実験を行いデータを分析した結果、この現象が生じるコンテクストと生じないコンテクストを識別することができた。三つ目は、ユニット価格を手がかりと捉え、同一ブランドでサイズが異なる商品に設定されるユニット価格と消費者の知覚の関係において、調整変数や媒介変数を含めた分析を行った。実験を行いデータを分析した結果、ユニット価格によるプライシング態度やブランド態度への影響には、価格情報の使用傾向や価格意識が調整変数としての役割を果たすこと、およびユニット価格の観察から生じる感情が媒介変数としての役割を果たすことを明らかにした。これらの研究は既に英文論文としてまとめており、現在は投稿準備中、あるいは投稿中で、今後は国際学会等でも発表していく予定である。また、昨年度に行った二つの研究の成果を、それぞれ国際学会で発表することができた。 本研究の課題である意味的手がかりについて、本研究では価格、値引き、品質、バイオグラフィ、ユニット価格、およびサイズを対象とした様々な研究を行ってきた。四年間の研究を通して、それらの手がかりの有用性とそれらが状況特性、製品特性、および消費者特性の影響を受けることを確認することができた。これらの成果は消費者行動を理解することにつながり、消費者行動研究への貢献はできたと思われる。
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