研究課題/領域番号 |
15K03724
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
柳 到亨 和歌山大学, 経済学部, 教授 (00437451)
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研究分担者 |
横山 斉理 法政大学, 経営学部, 教授 (70461126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中小小売商 / 商店街 / 事業継承 / コミュニティ / 商業政策 |
研究実績の概要 |
研究2年目の平成28年度には、日本国内のフィールドワーク、および韓国でのフィールドワークを本格的に実施した。その目的は、現場の商業者を共感的に理解し、検証可能な仮説命題を導出することである。 まず、簡略に日本のフィールドワーク調査を紹介すると、鹿児島市宇宿商店街振興組合の「にぎわい商店街作り支援事業」、「食と商のコラボレーションで商店街活性化事業」、「みんなの笑顔を作る商店街宇宿のタウンガイド」等の取り組みについて、当事者からヒアリングすることができた。特に、安心・安全なコミュニティを作る主役としての商店街組合のメンバーの詳細な取り組みを時系列的に整理し、資料として残せることができた。また、大分県の大分まちなか倶楽部の中心市街地活性化を推進する事例として資料を集めることができた。とりわけ、大分市中心部商店街振興組合とJRおおいたシティという大規模小売業と中小小売商の集合体である商店街振興組合との友好な関係つくりや、中心市街地の健全な発展をはかる上では非常に意義深い事例であることがフィールドワーク調査で分かった。 つぎに、韓国でのフィールドワーク調査は、二つの視点で進められた。一つ目は、商店街空間内の空き店舗を活用し、若年層の創業を促す支援事業を中心に現場を視察した。事業継承が多く行われないことや若年層の高い失業率を反映したものであるが、長期的な視点でその有効性に疑問を呈される可能性は多々残っている。ソウル市九老市場のヤングプラザ、釜山市国際市場の事例を中心に資料を集めた。二つ目は、地域社会の活性化とコミュニティ事業の関連性を調べるため、文化観光型市場を中心に、資料を集めた。ソウル市中央市場、釜山市国際市場、亀浦市場、全羅南道麗水水産市場、済州道ドンムン市場などである。 最後に、日本商業学会関西部会にて、「風呂(1960)の自己雇用概念の再考察」という題目で学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内フィールドワーク、および韓国でのフィールドワークを本格的に実施した。 まず、国内のフィールドワークにおいては、鹿児島宇宿商店街振興組合、大分市中心部商店街振興組合とJRおおいたシティ、 宮崎中心市街地の「Doまんなかコミュニティ」である。韓国のフィールドワークにおいては、ソウル市中央市場、釜山市国際市場、亀浦市場、全羅南道麗水水産市場、済州道ドンムン市場、ソウル市九老市場のヤングプラザの商店経営者へのヒアリング調査を行った。同時に、韓国中小商業の振興支援公的機関である小商工人振興公団の多くの関係者から韓国の商業支援政策および流通政策についてヒアリングを実施した。 なお、フィールドワークで得られた知見を日本商業学会にて研究報告を行った。 ただし、フィールドワークを踏まえた上で、実証研究に向けた分析枠組みを構築したが、朝鮮半島の政治情勢の不安定により、日韓の地域密着型商業集積の商店経営者を対象にした質問票調査までには至らなかった。諸般条件が整い次第、質問票調査に向けて、準備を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目になる最終年度の平成29年度においては、平成28年度実施できなかった質問票調査を行うことである。韓国での質問票調査の不確実性を回避するため、韓国の中小商業の振興支援期間である小商工人振興公団の研究所所長等の協力を盾に確実に市場調査(定量・定性)ができるような組織体制を作ることにする。平成29年度の後半には、フィールドワークや質問票調査から得られた結果を受けて、その妥当性を慎重に検討していきたい。その上で、専門家の意見や、国内外での学会でのアドバイスを受けつつ、効率的に研究をまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
朝鮮半島の政治的な情勢が不安定であったため、質問票調査が実施されなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
現地の行政機関の専門家の助言を得るための行政訪問や、現地のフィールドワーク調査および質問票調査を計画している。
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