本年度の研究成果は,一昨年度において取り組んだプラットフォームの競争優位性がどのようなマーケティング戦略と企業間関係によって支えられてきたのかという点に関する検討内容と昨年度内に海外の一流専門誌(International Small Business Journal)にアクセプトされたBook Reviewでの取り組みをもとに,日本の家庭用テレビゲーム業界での事実上の業界標準のハードウェアを供給する企業とそのポジションを狙う市場参入企業との企業間競争について事例研究を行った. そこでは,そうした企業間競争について,各ハードウェア企業によるハードウェアの品質選択や補完的なソフトウェアを巡る各ハードウェア企業によるプラットフォーム戦略,各企業のビジネスモデルを実現する流通戦略の観点などから考察を行った.具体的には,事実上の業界標準のハードウェアを供給する企業は,自社ではコントロールできないようなビジネス環境の変化に直面するまでは自社の供給する現行ハードウェアと後継ハードウェア間の共食いのみを考慮するだけで後継ハードウェアの発売時期を自社に有利に決定できるのに対して,そのようなビジネス環境の変化に直面してからは,一定の期間はそれまでの実績を背景に事前アナウンスメントの効果を発揮することができるものの,後継ハードウェアの開発およびソフトウェア開発環境の整備が遅れれば遅れるほど,それまでのような効果を発揮できなくなり,主要な市場参入企業に自社のユーザーベースを奪われ,販売実績のあるゲームソフトを供給するソフトウェア企業によるプラットフォーム選択の選択肢からも除外されることなどについて考察を行うことができた. こうした考察が最終的な研究成果として海外の専門誌にアクセプトされるよう,粘り強く取り組んでまいりたい.
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