研究年度5年目にあたる今年度の研究実績は、刊行した2本の論文および3回の学会・ワークショップでの発表に集約できる。そしてこれら合計5つの研究業績の概要について述べれば、以下のとおりである。 (1)論文"Optimal Deductible in Liability Insurance with Regard to the Limited and Unlimited Protection"(吉澤卓哉・榊素寛との共著)では、責任保険における示談代行の視点を含めたモデルを構築した上で、最適免責額にかかる経済分析を実施した。 (2)論文"An Evaluation of the New Japanese Bonus-Malus System with No-claim and Claimed Subclasses” (吉澤卓哉・榊素寛との共著)では、日本の自動車保険に特徴的に存在する事故歴の有無によって異なる等級制度について、シミュレーション分析による検討を行なった。 (3)ワークショップ発表「プラットフォーマーによる保険参入は望ましいか?」(吉澤卓哉・榊素寛との共同研究の内容)では、保険契約者のリスク情報に関して優位的な立場にあるプラットフォーマーを有する保険会社とそうでない保険会社が存在する市場にかかる競争構造の分析を行った。 (4)学会発表"How Do Optimistic Individuals Affect Advertisement of Insurance Firm?"(藤井陽一朗・大角道子・尾崎祐介との共同発表)では、自身の事故発生確率を主観的に過小評価する個人が存在する場合において、保険会社の広告が与える影響についての検討を行った。 (5)学会発表"A game theoretic analysis of sanction for the breach of duty to disclose in insurance contracts: A comparison of "all or nothing" and "pro rata" methods"(榊素寛・吉澤卓哉との共同発表)では、告知義務違反となった場合における2つのペナルティ制度にかかる比較を経済学的に行った。
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