研究課題/領域番号 |
15K03730
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
磯野 誠 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (50550050)
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研究分担者 |
高橋 佳代 鹿児島大学, その他の研究科, 講師 (90616468)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アイデア開発 / 市場機会 / 創造性 / 想像 / ビジョニング / バックキャスティング |
研究実績の概要 |
本研究は、新製品アイデア開発における開発者の認知プロセスのあり方に注目し、イマジネーション活用のあり方、その活用の効果、その条件を明らかにすることを目的とした。研究2年目である2016年度には、計画通り、新製品アイデア開発、創造的認知分野の先行研究のレビューをもとに調査課題を設定し、事例調査を実施した。 設定した調査課題とは、次である。革新的イノベーション創出を意図する開発プロジェクトにおいて、(1)文脈想像とは、どのような認知プロセスによって、アイデア創出に貢献するのか。(1-1)文脈自体はどのように想像され、設定されるのか。(1-2)設定された文脈をもとに、製品アイデアはどのようにして創出されるのか。(2)文脈想像の効果とは何と考えられているのか。ここでこれまで創造的認知の先行研究に合わせて「イマジネーション」を使っていたが、単に「想像」とする方が混乱が生じないものと考え、以降は「想像」を用いる。 事例調査として、革新的イノベーション創出を意図した開発プロジェクトに主体的に関わり、かつ文脈想像のアプローチを活用した開発者13名を対象としたインタビュー調査を行なった。その結果得られた知見は、次のようにまとめることができる。(1)文脈想像とは、文脈の内容が顧客理想状態型か開発者妄想型か、あるいは文脈の形がシーン型かストーリー型かによって分類できる。開発者妄想型、ストーリー型とも、製品アイデアのより高い創造性を志向する故であること、さらにストーリー型とは、顧客にその文脈自体を製品と同時に提示しようとする試みであること。(2)文脈想像とは、文脈の想像と、その文脈構成要素としての製品の想像という二段階の想像の過程を内在し、それぞれの想像の段階において駆動さえる認知プロセスとは主に、カテゴリ知識の心的合成や心的変形、あるいはアナロジ転移であること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度に行なった事例調査は、それをまとめて同年度内に学会報告のための論文原稿投稿を行うことを目指していたが、想定通り、事例調査自体に時間がかかり、論文原稿の投稿は2017年度に持ち越しとなった。しかし2017年度の5月現在、事例調査実施はほぼ終えた。従ってこれから事例調査からの知見をまとめ、2017年度8月に学会報告のための論文原稿投稿を行う予定としている。その学会はマーケティング学会を想定している。 そのためにあいにく2016年度には、雑誌論文、学会発表とあげることのできる業績はできていない。 事例調査自体に時間がかかったのは、インタビューを行なった開発者は19名に及んだこと、またインタビューを申し込んでも断られるケースもかなりあったこと、学内業務として教務委員を担当した故にそれに想定以上に時間が取られたことがある。しかし複数開発者対象インタビューというフィールドワークを確実に実施するには、やはり最低でもこの1年は必要であったものと考えている。また本年度2017年度は教務委員を外れ、この科研のための時間を確保する予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目となる2017年度には、上述のように前年度に行なった事例調査の内容をまとめ、8月に学会報告のための論文原稿投稿を行う予定とする。さらにその学会報告において他の研究者から頂く教示をもとに内容を修正し、年度内に学会への論文投稿を目指す。 同時に研究当初の予定通り、本年度はこれまでの実験調査や事例調査からの知見をもとに、その知見の開発実務へ還元として、開発実務者を対象とした研究報告会を開催し、報告する(6月に第1回目、10月に第2回目を予定)。その報告会には事例調査で協力を頂いた開発実務者でさらに報告会にも協力頂ける方にも参画頂き、その開発状況をご報告頂く予定としている。 そして実験調査からの知見をまとめた論文、事例調査からの知見をもとにした論文、学会報告資料、実務者向け報告会のために使用した報告資料は、研究代表者のホームページ、research mapに掲載する。 また研究当初は事例調査からの知見をまとめた論文とは別に、実験調査と事例調査からの知見を統合したものを冊子化することを想定していたが、事例調査からの知見をまとめた論文が、実験調査からの知見も踏まえ拡張したものとなっており、より包括的な知見を含むことになるために、その実験調査と事例調査からの知見を統合したものを別に用意することは不要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度2016年度の研究代表者の実支出額は、当初の想定よりも旅費について150,000円程、謝金について210,000円程少なかった。これは今年度に予定し実施した開発実務者へのインタビューが、想定よりも効率良く行うことができたため、またそのインタビューへの謝礼金が、想定よりも少なく済んだため、また学会報告が今年度中にはできなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度には、2016年度中にできなかった学会報告を行うが、そのための旅費等を必要とする。また開発実務者を対象とした研究知見の報告会を数回行うことを予定するが、そのための報告資料冊子作成・印刷費を必要とする。また開発者対象インタビューは基本的には2016年度に終えているが、考察を進めるにあたり、今年度においても追加インタビューが必要になることが十分想定され、そのときの旅費などを必要とする。
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