研究課題/領域番号 |
15K03739
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
李 瑞雪 法政大学, 経営学部, 教授 (20377237)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロジスティクス・クラスター / 物流集積 / 物流サービス / イノベーション / 輸送ノード / 商業集積 / 中欧班列 |
研究実績の概要 |
2017年度では、前年度に続いてロジスティクス・クラスターに対するフィールド調査を実施した。具体的には、鄭州と義烏の両地域に対しては2回目の現地調査を、西安、濾州、宜賓の3地域に対して一回の調査を行った。この5地域における各種プレーヤーの実態と、ロジスティクス・クラスター(物流集積)の形成プロセスについてインタビューや参与観察等の手法で情報収集に取り組んだ。 成都と臨沂に対するフィールド調査の内容をもとに、研究ノート1篇(李,2018)、論文1篇(李,2017)をまとめ上げ、刊行した。成都と臨沂の事例はそれぞれ輸送ノードベース型ロジスティクス・クラスターと商業集積ベース型ロジスティクスの理論的サンプルとして取り上げて、パイロット研究によって得られた帰納的推論(李,2014)を検証した。また、両類型のロジスティックス・クラスターの形成プロセスにおける相違を考察した。 臨沂の事例研究から、商業集積に従属的な物流産業が広域的な物流ハブおよびロジスティクス・クラスターへ脱皮するために3つの転換が重要な意味を有する推論に達した。即ち、物流事業者の立地に関して分散から集約への転換、地方政府の姿勢に関する自由放任から積極的な関与への転換、高度化した一部の物流企業の営業とサービスに関する域内指向から域外指向への転換の3つである。この3つの転換により、コーペティションな物流市場が生成し物流集積の物的基盤制度的基盤が整備され広域的に物流需要が運び込まれることになる。そこで更なる域内の物流創業を引き起こし物流市場の拡大をもたらし、集積が集積をよぶ好循環が生まれる。 また、中核的輸送サービスの開発と育成とロジスティクス・クラスター形成との関係性を考察するために、「中欧班列」と呼ばれるユーラシア大陸横断鉄道コンテナ輸送サービスに関する文献サーベイと現地調査(成都、西安、鄭州など)を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度では、論文1篇、研究ノード1篇、ワーキングペーパー1篇を刊行し、投稿中の論文と執筆中の研究ノートは1篇ずつある。本研究プロジェクトが実施して以来、計7篇の研究成果を積み上げており、ロジスティクス・クラスターの形成メカニズム解明という当初の研究目標に着実に近づきつつあると考える。当初計画したアンケート調査は、予算の大幅不足や回収率の懸念などにより、何回も準備したにもかかわらず、実施に至らなかったが、ケーススタディによる理論導出の手法で、ロジスティクス・クラスターの両類型の実態を明らかにし、それぞれの形成プロセスと形成メカニズムに関する理論の構築が可能となると確信を持つようになった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は研究プロジェクトの最終年度である。これまでの積み上げてきたケーススタディによる推論と検証結果を踏まえて、ロジスティクス・クラスターの形成メカニズムに関する理論を提示する論文を執筆し、学会発表とともに学術誌に投稿する計画である。なお、これまでのケーススタディは日本、中国、韓国の事例に集中しているが、理論の堅牢性と普遍性を高めるために、2019年度以降、東南アジア、南アジア、中南米などの新興国・地域に広げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度実施予定の一部の現地調査は先方の都合により、2018年度に延期することになった。従って、そのための予算を2018年度に執行することを請求したい。
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