2018年度は本プロジェクトの最終年度である。本年度では、輸送ノード・ベース型のロジスティクス・クラスター(LC)と商業集積ベース型ロジスティクス・クラスターのそれぞれの形成メカニズムを、事例研究の追加によって、導出された理論の検証作業を繰り返した。具体的には、商業集積ベース型LCとして義烏を、輸送ノード・ベース型LCとして宜賓・濾州、成都、仁川を取りあげ、パターン適合の手法で事例による理論追試を行った。その結果、輸送ノード・ベース型のLC形成プロセスにおける「3つの組合せ」モデルと、商業集積ベース型LCの形成プロセスにおける「3つの転換」モデルは概ね検証できた。 また、本年度では、中核的輸送サービスの創設と成長がロジスティクス・クラスターの形成に与える影響という視点から、中欧班列とよばれるユーラシア横断鉄道コンテナ輸送サービスに焦点を当てる研究に取り組んだ。主要な中欧班列の発着する成都、重慶、鄭州、西安、義烏などでフィールド調査を実施し、鉄道貨物ターミナルを中心に物流施設の集積状況や物流サービスの開発状況などについて要素ごとの点検を行うことを通してロジスティクス・クラスターが形成しているかを評価する作業を進めた。 もう一つ取り組んだ課題は、中欧班列は新しい国際基幹輸送モードになるかという問題について、輸送モードと貨物セグメントとの適合関係という視点から初歩的な考察を展開した。その結果、中欧班列に適合する貨物セグメントの要素が析出できた。即ち、①比較的高い商品価値、②重量物・嵩張り貨物、③内陸都市発着、④グローバル・サプライチェーンの同期化、⑤比較的速い価値減退の5要素である。
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