オープン・メディアの代表である動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」の利用ユーザーが世界的に拡大している。YouTubeは、他のソーシャルメディアのように、当初はユーザーが生成するコンテンツ(UGC)の投稿と視聴の場として成長してきたが、ここにきて企業も公式チャンネルを相次いで開設しており、企業主導型コンテンツ(FDC)を公開するようになった。YouTubeは今や最もユーザーに影響力のあるオープン・メディアとして、従来のマス・メディアをしのぐ勢いを見せている。オープン・メディアという共通の土俵の中でFDCとUGCは競争・共存する時代となった。しかし、YouTubeのコンテンツ情報の仕組みには不明な点が多い。 そこで本年度では音楽コンテンツを取り上げ、レコードレーベル(FDC)と、ボーカロイド楽曲(UGC)がYouTubeというオープン・メディアを通じて市場にどのように受容され、普及しているのかを探索的に研究する。音楽業界における企業主導型とユーザー生成型というコンテンツ特性の違いが視聴にどのように影響するのか。また新規の投稿コンテンツの普及プロセスについて、YouTubeのAPIから投稿データを取得して実証研究を行った。そこから得た知見は、FDCのチャンネルには所属アーティスト間で関係をつくる互恵的なネットワーク構造があり、それが視聴成果にプラスに影響していた。一方のUGCチャンネルではそうした関係が見られず、その自律的なネットワークは視聴成果に影響を与えない。一方で新規に投稿される新作コンテンツの普及はFDC、UGCともにピークが垂直型に立ち上がるプロセスであり、その逓減はUGCでゆるやかになる傾向がみられた。 また、研究期間全体の成果として、『コミュニティ・ジェネレーション』(千倉書房刊、2017年12月)として刊行することができた。
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