本課題は、海上保険を中心として主要市場の企業保険約款を比較して企業保険契約理論を研究するものである。本研究課題では、イギリス、ドイツ、北欧諸国、米国、日本の主要な海上保険約款、その他の約款の状況を調査し、それらの約款を比較し、その背景に存在する契約法理論を研究した。 グローバル競争が激しい海上保険では、ロンドンの約款が圧倒的優位にあり、ほかの国はその影響を受けているが、その一方、北欧の船舶保険約款がイギリスとは異なる背景と仕組みで作られ、その影響力が増しつつあり、イギリスもその動きに対処せざるを得ない状況になってきた。そうした中、イギリスで2015年保険法が制定され、企業保険約款を対象として国際的影響力を高める意図の契約理論が示された。 そこで、本課題では、特にイギリス2015年保険法を中心に研究を掘り下げ、最大論点である契約締結時の情報提供義務について比較研究を進めた。また、国際的な再保険契約についての契約原則を条文化するプロジェクト(PRICL)が開始したことから、それに加わって再保険契約の研究も進めた。研究の過程では、日本から外国への発信の重要性を痛感し、英語による研究報告や論文発表にも力を入れた。 4年間に、日本語論文(4本)、英語論文(1本)、英文研究書(1章分)、体系的概説書(日本語、全13章)の執筆、入門書(日本語、2章分)への研究成果の反映、学会報告(1回)、研究会等における報告(海外7回、日本1回)を行った。また、編集・執筆中の専門書にも研究成果を織り込む(2019年度後半出版予定)。 そのうち、2018年度は、損害保険入門書(監修、2章分執筆)、海上保険に関する体系的概説書(単著)、海上保険法に関する法改正に関する紹介論文(1本)、PRICLに関する研究報告を行った。PRICLについては、6月30日に東京の研究会でも報告予定である。
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