本研究の目的は、コモディティ化を防ぐという観点から、どのような消費者知識を構築すべきか(新しいコンセプトやキーワードをどのように探索するか)について検討することである。 社会の変化が加速するなかで、コロナ禍を経て一層、人々の価値観、行動原理も変容しているとみられる。新しいコンセプトやニーズを見出すにあたっては、個人の内面に焦点をあてるだけでなく、個人を取り巻く環境、社会の有する空気や価値観も含めて多面的に捉える必要がある。 定性調査の専門家は実際インタビューにおいて複数の手法を駆使して対象者の本質的なニーズを分析している。これらのプロセスはある程度までは形式知として言語化はできるものの、未経験者が単純にそのプロセスをたどるのみでは、対象者の本質的な理解に到達することはできない。 本研究では、事前調査、本調査併せて計5名のデプス・インタビューを実施している。本調査(テーマは居心地のよい空間)は投影法の経験を積んだデプス・インタビューの専門家にインタビュアーを依頼、研究者立ち合いのもとで行った。デプス・インタビューの中では、イメージ(画像)を用いて潜在意識を探る手法、コリドーテクニック、人物投影法などを用いた。インタビューの内容に基づき、潜在ニーズについてラダリング分析を行い、価値に関するキーワードを抽出した。 この調査に関する専門家の分析手法(特に投影法)と解釈結果(直観的な理解を含む)をたどりながら、対象者の発言をどのように整理し、個人の価値観や行動原理を理解したらよいのかについて検討した。また、調査全体を俯瞰して、個々の手法、分析フレームの位置づけ・目的についての整理を行った。
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