研究課題/領域番号 |
15K03748
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
山田 昌孝 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (20174740)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オーガニックインフルエンサー |
研究実績の概要 |
研究の目的:筆者は、消費者革新性について研究してきた。その目的は、消費者のイノベーション採用行動の内,採用時期の予測精度向上にあった。採用行動には消費者革新性が重要な要因であることが実証されたが、ここ1、2年のICT、とりわけ、ソーシャルメディアとスマートフォンの急速な発達・普及で、消費者と小売業を取り巻く環境が変わり、独立志向の強い消費者革新性に代わってコミュニケーション性向の強いインフルエンサーの影響に重きを置くようになってきた。本研究では、業界の用いるインフルエンサー(SNS 等で活躍している非有名人を想定)を所与とし、1.その実態調査、2.代表的なものの概念、測定スケールを明らかにし、3.我々の消費者革新性スケールを用いて両者の関係を解明する。その上で、4. ICT 環境での消費者イノベーション採用過程を明らかにする。 当該年度の実績概要:1995年のインターネット商用化以来既に20年を経過し、企業側には消費者掌握のための様々なツールと消費者側ではそれらによって自然発生的に新しい消費行動のスキルが生まれてきた。そこでインフルエンサーも両者の影響を受けて変容しており、このインフルエンサーをオーガニック・インフルエンサー(以後OIとする)と呼び次のように定義した:ICT環境のもとに企業のマーケティング施策とそれによって自然に育まれた新奇性とコミュニケーションを好み,所属コミュニティを守り他者の消費行動に影響を及ぼす消費者。つぎに、楽天市場の「レビュアー番付」参加者を取り上げ、他者への影響を与える複数のトレイト・スケールをばらして、アンケートにより回答者の番付に相関の高い9個のアイテムで構成されるスケールを開発した。多項ロジスティック回帰を用い、本スケールの妥当性を検証した。6月に上海のマーケティング・サイエンス学会と11月のJIMS第100回記念大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
6月に復旦大学でのマーケティング・サイエンス学会の発表の後,順序ロジスティック回帰の各セグメントの予測精度に疑問を持ち,7月から9月まで文献調査を行ったが,これといった回答を得られなかった。その後京都産業大学のマネジメント研究科の博士課程の長岡敏彦氏の博論指導が追い込みに入り,結局,最上位の2セグメントについての分析を行うのが正解であると判断した。つまり,上位になるほどOIの性向が強くなるので,それより下位のセグメントを分析に入れると分散が大となり精度が落ちるという結論に達した。より多くのデータでの再分析は時間の関係で取りやめとした。10,11月は博論指導と並行してJIMSの第100回記念大会発表の準備をし,発表では,初めて実際の楽天市場に存在するレビュアー番付を用いて導出したOI尺度の意義が高く評価された。12月2日に博論予備審査では,この研究は第5章として博論を構成した。2017年1月29日の本審査では,博士学位論文審査委員の委嘱を受け,3月19日学位を授与された(甲マ第8号 平成29年3月19日 長岡 敏彦 新製品普及における消費者革新性概念の新地平-理論-傾性中間概念に基づいて- )。今後過去一連の科研研究をまとめてこの博論を基に共著で書籍として出版をしたいと考えている。本審査での問題点として,相関分析についての順位相関の検討については本審査後直ちに計算をして9項目中8項目はどの方式をとっても共通していることを確認し,問題ないことを確認した。番付の安定性に疑義が入ったことについては,本来1ランクずつ昇格してくるので安定であるが,平成29年度で過去1年分のデータで確認することとしている。本年度の後半で、未来データに基づいた高いコンバージョン率を実現する電子もぎりTixeeを考察する(松田 2013)予定であった。しかし,11月活動を停止,他企業に吸収されてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
そこで平成29年度に,Tixee,チケットぴあに限らずこれらを通してチケットを購入した場合,個人情報はチケット企業に保有される。これより購入時などに会場近隣のレストランなどのお得情報を配信しその活用性向を測定する尺度を開発する。 さらに最近の近接マーケティング(proximity marketing)の利用性向についても同様の尺度を開発したいと考えている。現在の技術ではアプリを起動しなくても、発信機に近づいたときにメッセージを送ってアプリの利用を促すことができまる。お店の前を通りがかったときに、スマホが店に設置された発信機の電波などを受け、アプリ立上げを促すメッセージが表示される。もの(建物,商品,人など)の方からスマホに信号を送ることが出来る。場合によってはCoke ONアプリの様にGPSによる近傍の複数の自販機の位置も知らせることが出来る。 近接マーケティングは,従来の購買意思決定過程の途中で,特に店舗内外,商品近傍で介入して消費者に新たな購買意思決定の機会を提供して購買を惹起させる装置と考えられる。したがって,ROIを明示的に得られる数少ない情報投資として注目され始めた施策である。企業の働き掛けで消費者がこのプロセスを起動するには「専用アプリのインストールとその立ち上げ」行動が必須であることが分かる。 そこで,このアプリの採用と立上げ行動の開始性向とその理由を追及する。まず,行動性向を測る傾性概念尺度としては,アプリの既採用件数の多寡の測定とアプリ採用意向の測定をあげたい。理論-傾性中間概念尺度としては,DSI, OI, FAN SEEKING,節約志向,計画性などの既存尺度の項目をばらして,前者のアプリ既採用の多寡とアプリ採用意向の結果との相関の大きさで番付の時のようにトップ10程度の項目で新しい尺度を作りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート実施の遅れ。そのための費用が残高となっている。また,今年度の海外学会が近場の上海であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケートの実施と海外学会発表。
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