研究課題/領域番号 |
15K03750
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
山岡 隆志 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (70739408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顧客志向 / 顧客エンゲージメント / カスタマー・アドボカシー |
研究実績の概要 |
インタビュー調査では被験者のこれまでの経験上、アドボケイトを生み出すために行った取り組み、志向性を生み出す要素、どのような成果をもたらしたかなど具体的な経験に沿って調査を行った。ここから得られたデータを使って質的調査を行うことにより、カスタマー・アドボカシー志向の中心概念となり得る5要素、先行要因としては、6要素、成果としては、6要素を抽出することができた。 ここで得られた先行要因としては、「経営」、「組織」、「従業員環境」、「リーダーシップ」、「市場情報活用」、「企業理念・規範」である。Kirca et al. (2005) はメタアナリシスにより市場志向のモデルを構築し、先行要因として「トップマネジメント」、「従業員」、「組織」があることを実証により明らかにしている。本研究で抽出された、経営、リーダーシップ、組織、従業員環境、経営理念・規範と類似の概念となる。 また、Kohli et al. (1993) は市場志向の中核概念として、「情報創出」、「情報共有」、「情報に対する反応」の3つの要素に整理している。本研究で抽出された市場情報活用については、市場志向の中核概念と類似の概念となっている。従来の市場志向の中心概念がカスタマー・アドボカシー志向では、先行要因として浮かび上がったかたちである。現代版顧客志向であるカスタマー・アドボカシー志向の先行要因に、従来の顧客志向の中心概念が当てはまるということは、顧客志向の進化を示すもので納得感がある。従来の顧客志向の基盤があることが、カスタマー・アドボカシー志向を構築する前提となる仮説を創出することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献サーベイによって関連要素の網羅的な抽出を行い有力な仮説の創出を行った。新たな関連要素の抽出と整理、仮説の整理を行うことを目的に、顧客志向に対して意識が高い経営者または経営にたずさわる組織に所属する部長級以上の実務家32名に対して、デプス・インタビュー形式での聞き取り調査を行った。文献サーベイと定性調査を並行してインタラクティブに行うことにより、関連要素と仮説の緻密化を進めることができ実行性の高い定量調査の準備が整うことを狙っている。文献サーベイの進捗に定性調査の計画が引きずられないために、不意な研究進捗の遅れに対する耐性も兼ねた方法でもある。 得られた回答内容をテキスト化し、テキストマイニングを行って幅広くキーワードを抽出した。次に、質的研究支援ソフトウエアであるMAXQDA Analytics Pro12を使用して、抽出されキーワードについて質的データ分析を行い、要素の分離と統合を行いながら整理を行う。前後の文脈を把握して異なるワードであっても同じ趣旨のものは同類の要素として整理を行うなど、全てのキーワードについて目検による確認を行った。 次に今まで行った質的調査を基に設計した調査票を作成し、調査会社がもつサンプルを利用して、経営者または経営にたずさわる組織に所属する管理職以上の実務家に対して、事前調査を行い106名から回答を得た。この事前調査で得たデータを使い、探索的因子分析および確認的因子分析を行い調査表の改善などを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
事前調査で得たデータをもとに、統計分析による調査表の改善を行い本調査用の調査表を完成させる。調査会社がもつサンプルを利用して、経営者または経営にたずさわる組織に所属する管理職以上の実務家を対象に調査表の送付を行い、BtoC企業およびBtoB企業それぞれ800サンプル合計1,600サンプルの回収を目指す。回収されたデータを使用して、丁寧に探索的因子分析および確認的因子分析を行い、妥当性の高いカスタマー・アドボカシー尺度の開発を行う。さらに、カスタマー・アドボカシー志向が生まれる原因となる「先行要因」、志向することから得られる効果を表す「成果」を明らかにすることによりアドボカシー志向モデルを構築することである。成果の一部について、2017年度組織学会研究発表大会で報告予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質的調査に多くの時間を割り当て定量調査の実施を次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画通りの定量調査を実施予定であるため、次年度に消化する予定である。
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