研究課題/領域番号 |
15K03755
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
向山 雅夫 流通科学大学, 商学部, 教授 (00182072)
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研究分担者 |
趙 命来 香川大学, 経済学部, 准教授 (60582228)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 眼鏡産地 / 産業集積 / 流通システム変動 / 眼鏡フレーム / 鯖江 / 眼鏡専門量販店 |
研究実績の概要 |
本研究は、眼鏡流通システムに発生している複雑性を、取引主体間関係の変化・主体の行動および機能の変化・眼鏡生産分業体制の変動・外国の眼鏡生産・流通システムの変化と国内流通システムとの関連性の視点から、明らかにすることを目的としている。本年度は研究実施計画に従って以下の通り研究を実施した。1.第1回研究会(2015.4.28)眼鏡小売業界の現状について周氏に報告を依頼し、業界の現状について共通認識を得た。2.第2回研究会(2015.7.24)本年度の具体的研究計画を策定し、調査計画を作成した。3.上海丹陽調査(2015.8.24-27)中国眼鏡主要産地である丹陽を視察し、眼鏡卸売市場・卸売業者・丹陽市の眼鏡産業担当官にインタビュー調査を実施した。中級クラスのフレーム生産については、丹陽が産業集積地として急速成長中であり、それが日本に輸入されることによって、眼鏡小売市場が大きな影響を受けている実態が把握できた。 4.韓国大邱第1回調査(2015.10.30-11/1)韓国のフレーム産地にある韓国眼光学産業振興院のSon所長にインタビュー調査を行い、韓国フレーム産業が急速な衰退を経験したのちに、新たな技術開発によって近年再度成長軌道に乗ったことを確認した。5.韓国大邱第2回調査(2015.12.25-28)Son所長との共同研究実施のための打ち合わせを実施した。6.日本レンズ調査(2016.2.1)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼鏡流通システムに発生している大変動は、様々な要因から生み出されていると考えられる。その解明のためには、眼鏡レンズおよびフレーム生産システムの成長・変動の経緯、眼鏡流通システムの成長・変動の経緯、海外の眼鏡生産構造と特徴およびその成長の経緯、眼鏡レンズ・フレームの技術開発の経緯などを明らかにしなければならず、そのためには多様な角度から広く情報を収集分析する必要がある。 初年度(2015年)は、このような必要性に基づいて、生産システム・流通システム・海外の実態把握に研究の力点を置いた。レンズ生産者へのインタビュー調査・中国上海および韓国大邱への調査は、眼鏡業界で発生している大変動の実態を把握するとともに、海外における眼鏡産業の成長と国内の流通システム変動とに密接な関係があることを、強く示唆するものであった。初年度のこの研究成果は、今後の研究計画具体化のためにきわめて有効であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
眼鏡業界の構造はきわめて複雑であり、怪奇であることが初年度研究の結果、明らかになった。たとえば、小売店における眼鏡価格の決定権は小売業者が握っている。しかしその原価構造は謎に包まれている。そこで使用されるレンズの生産者と仕様は共通だとしても、生産地によってレンズコストには大きな格差があり、その点を消費者は知ることができない。つまり、なぜその眼鏡はその価格でその店で販売されているのかが不透明なのである。その原因の一つは、レンズ生産に関わるグローバルな生産システムが構造変化しつつあることであり、眼鏡流通システムのチャネルリーダーが不在である点に求めることができる。 このような認識に基づき、次年度は眼鏡業界に関わる多様な主体に対するインタビュー調査を継続実施し、各主体の構造変動に関しての認識を理解しつつ、そこで明らかになる構造変動要因を抽出することによって、統合的な分析枠組みを構築することに力点を置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である趙命来(香川大学)は、2016年4月より在外研究のため、1年間の予定でイギリス・スターリング大学に滞在する。眼鏡業界の構造変動要因の一つとして、外国の眼鏡生産システムの変化が考えられる。日本の眼鏡業界に影響する海外の2大生産地は、中国とイタリアである。後者は、それ以前の中心生産地がドイツ・フランスであったにもかかわらず、近年その座を奪ったという事実が初年度の研究から明らかになった。研究分担者は、1年間ヨーロッパに滞在する機会を得たため、それを利用してヨーロッパにおける眼鏡生産中心地の移転の実態とその背景を現地で調査する計画を策定した。そのため、現地での旅費・資料収集にかかる費用として、初年度予算の一部を次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由から明らかなように、研究分担者はイギリス滞在中に、グローバル化に伴う世界の眼鏡生産中心地の移行に関して、現地にて調査を行う予定である。具体的な調査先は現時点では未定であるが、とりわけイタリアの優勢がなぜフランス・ドイツを凌駕したのか、イタリア眼鏡生産者のブランド戦略の特徴に焦点を絞って、研究を実施する。
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