研究課題/領域番号 |
15K03756
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山下 貴子 同志社大学, ビジネス研究科, 教授 (70309491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金融マーケティング / 金融リテラシー / 金融資産選択 / 投資型金融商品 |
研究実績の概要 |
昨年度は、日本の金融資産選択行動を米国と比較するため、年齢×時代の交互作用を考慮したベイズ型コウホート分析を行った。 本年度は昨年の研究を踏まえ、2016年に実施された金融リテラシー調査の集計ベースの結果をもとに、日本人の金融資産選択行動や考え方について予備的な考察を行いワーキングペーパーにまとめた。 行動経済学のフレームに基づき「損失回避傾向」、「近視眼的行動」、「横並び行動」の指標を用いて消費者の金融行動や金融教育の学習時に発生しやすい行動バイアスが金融リテラシー調査の結果とどのような関係を持つのか、確認した。また、金融リテラシー調査の国際比較(米国、OECD諸国)から日本人の金融資産選択行動の特徴を確認した。 調査の結果より、日本の消費者の多くは多様な資産への投資の検討を行っていないと推測できる。金融リテラシーの基本的な考え方は、「知識」だけでなく「習慣化=知識を前提とした継続的行動」も含まれるようになっている。比較購買を行うためには、余裕資金がある一定額に達したときに預貯金以外の資産クラスへの投資を一度は検討する習慣を定着させることが必要となる。このとき、選択可能な金融資産が想起集合の中に含まれなければならない。本調査で、「望ましい金融行動」(金融商品の比較購買)をとる人の割合が「金融教育経験者」において最も高かった結果からも、金融リテラシー・マップに沿った金融教育は必須となることがわかった。 また、大手地方銀行との共同研究「金融リテラシーによる「顧客ファイル分析」と「実証検証」」に参加し、投資型金融商品の購入意向の強い「顧客プロファイル」の作成に関与した。この研究成果は非公開であるが、銀行の持つ多様な顧客データを基にしたプロファイリング作業は、本研究への示唆に富むものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金融リテラシーと金融資産選択行動に関する先行研究のレビューを行い、「金融リテラシー調査」の個票データの分析に取り掛かっている。ここまでの経過はワーキングペーパーにまとめたものの、査読付き論文などで公刊には至らず、この点では「やや遅れている」と評価しており、引き続き公刊を目指して研究内容をリバイスしていく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、金融リテラシーと金融資産選択に関する研究を計画に従って実施する。 金融庁が実施した「金融リテラシー調査」の個票データを元に、個々のセグメントに合致した金融リテラシー教育や、企業側からの金融マーケティング戦略のありかたを検討していく。 また、成果を2017年中に査読付き論文に投稿し、公開を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
金融リテラシー調査のデータとして昨年度より日経NEEDSの購入を予定していたが、2016年度に金融庁により大規模な「金融リテラシー調査」が実施されることがわかったため、このデータの無償貸与の許可を得ることができた。そのため、先にこちらのデータを用いた分析を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、日経NEEDS調査のデータ購入に充てる。 金融庁の「金融リテラシー調査」と調査項目の重複は少ないため、双方のデータを用いて相互補完的に分析を実施する。
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