米国家計の金融商品保有金額と保有率について “Survey of Consumer Finance” の1989 ~ 2013 年までのデータを用い,世帯主の年齢×時代の交互作用効果 を考慮したベイズ型コウホートモデルで分析を行い、査読付き論文に掲載された。このような手順を取り入れることにより,年齢×時代の交互作用効果のいわば濃淡といったものを探ることができるようになると考えた. 高齢者世帯の資産取り崩しやリスク性資産回避行動の程度は,年齢×時代の交互作用効果の推定値の動きから考察すると,時代効果に現れる景気変動の影響に呼 応した資産選択を行っていた.年金準備金も年齢×時代の交互作用効果がみられ,保有額のピークが徐々に60代から70代にシフトしていった.1946 ~ 63年に生まれたベビーブーマー世代は保有額,保有率ともに大きくなっており,法制度の変更や市況が時代効果や年齢効果の変化をもたらし,世代人口構成比率の厚さもあって米国の家計貯蓄残高における年金準備金のシェアを大きく増加させる結果となった.負債については,教育ローンの保有額には時代効果が大きく,新しいコウホートほど保有率も増加している.一方でクレジットローンや自動車ローンの保有率は新しいコウホートほど減少しており,新しい世代のボリュームが拡がるにつれ自動車や耐久消費財の購入は抑制されていくと予測される.このように長期の時系列調査において年齢×時代の交互作用効果を検証することで,時代の変化が特定の年齢(ライフステージ)に与える影響を推定値の動きから捉えることができた.
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