研究課題/領域番号 |
15K03761
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠田 朝也 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (50378428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 会計学 / 管理会計 / 資本予算 / リスク管理 / 実証研究 |
研究実績の概要 |
当研究の目的は,資本予算におけるリスク管理の実態を明らかにしようとするものである。本年度は,以下の2つの点において,研究を進捗させることができた。 まず第1点目として,日本管理会計学会の統一論題報告において,資本予算実務の課題について取りまとめた成果を報告する機会を得た。報告内容には,当研究課題において実施してきた資本予算にかかわるリスク管理に関する質問票調査の結果を織り込んだ。特に,投資評価時の定性的リスクに対する対応の状況,および,投資後の撤退基準の有無などに関する160社を超える日本企業の実務上の課題について論点整理を行い学会の場で議論をすることができた。 第2点目としては,企業価値評価を実施する際のDCF法の運用に関して,将来の倒産リスクを考慮した実務事例について調査を行った。一般に,DCF法を利用して企業価値評価を行う場合,長期にわたり将来のキャッシュフローを予測する必要がある。しかし,実務運用上,キャッシュフローを直接的に予測する期間は限定せざるを得ない。具体的には,向こう5‐10年程度の期間にわたりキャッシュフローを直接的に予測したのち,それ以降の経済的価値については,直接的な予測最終年度のキャッシュフローが一定の成長率または減少率で継続するといった前提に基づく簡便的な計算を行う。この簡便的な計算により予測される経済価値は継続価値と呼ばれている。しかし多くの場合,DCF法により予測される経済的価値のうち,この継続価値の占める割合が非常に大きくなることが多い。そのため実務上,DCF法による企業価値評価額は過大なものとして捉えられることが多いようである。この点に配慮して企業価値評価を実施しているコンサルティング会社の実務事例に触れる機会を得たのでこの調査を進めてきた。当該実務事例の意義を整理した事例研究を公表する予定で論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は,第2年度末に依頼を受けた日本管理会計学会の統一論題の場において,当研究課題に関連する内容について報告することができた。また,当該報告内容に基づいた学術論文は,年度末に当学会誌の論壇として掲載された。 以上,本研究課題に関連して,初年度から当年度終了時点までに計3編の論文を公表したこととなる。また,現在進捗中のDCF法にかかわる調査内容に関するケース研究も最終年度内に論文として公表される予定となっており,ここまでの進捗は,おおむね順調に進展しているものと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度となる。次年度は,第2年度に実施した質問票調査と,第3年度までに実施してきた質問票調査の調査結果に関する論点整理および学会報告から得られたコメントなどに基づいて,さらに踏み込んだ分析を進める。また,各種の調査結果等を踏まえた上で,企業への訪問調査,関連研究の情報収集,資料収集,およびそれらの検討などに取り組むことで,研究成果の最終的なまとめ上げを目指す。 なお,倒産リスクを考慮したDCF法の実務的運用実践について触れる機会を得たので,この点については少し立ち入った検討を進めていければと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度は,所属している主要学会の一つである日本管理会計学会から統一論題報告の依頼を受けたため,次年度に向けた各種の調査や情報収集を実施することよりも,当年度までに得られた調査結果に基づく論点整理や学会報告の準備,および当該学会誌に掲載される論文の執筆などに相対的に注力せざるを得なくなり,それにより一部の計画に変更が必要となった。次年度使用額については,当年度に実施する予定であった当研究に関連のある調査,情報収集,および,各種の資料収集に関係する経費等に使用する予定である。
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