本研究は,M&A成立後のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション:M&A成立後の統合作業/プロセス)において,いかに効果的に被買収企業のMCS(マネジメント・コントロール・システム)との統合をはかり,一つの有効なシステムを作り上げるか,そのための「MCSの統合」に関する理論的枠組みを構築することを目的としている。 平成29年度の研究においては,アンケート調査の分析結果やこれまでの研究で浮き彫りとなった「PMIの成功要件」などの研究課題を踏まえながら,本研究のテーマである「PMIにおけるマネジメント・コントロール・システムの効果的な統合フレームワーク」の構築を行ってきた。 そこでまず,これまで行われてきたマネジメント・コントロール概念の展開を整理し,会計数値による公式的なコントロール概念から,多様なコントロール手段が組み合わさって機能するコントロール・パッケージとしてのマネジメント・コントロール概念へとその概念が拡張されていることを指摘した。そのうえで,Malmi & Brown[2008]によるパッケージとしてのマネジメント・コントロール・システムのフレームワークに依拠しながら,PMIに適合したコントロール・パッケージの組み合わせならびに,各パッケージ間の関係性を考慮に入れた,マネジメント・コントロール・システムの統合フレームワークの検討を行った。そして,①PMIに特有のコントロール手段をコントロール・パッケージの組み合わせに取り入れ,②統合プロセスであるということから「時間軸」の観点を取り入れ,③この「時間軸」の観点を入れることによってパッケージ間の関係性を明確にした形の,「PMIにおけるマネジメント・コントロール・システムの統合フレームワーク」を提示した。
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