研究課題/領域番号 |
15K03767
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 清和 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (40258819)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CVP分析 / リアルオプション / 残余利益評価モデル / 原価態様の非対称性 / 株式価値の非線形性 |
研究実績の概要 |
現行の企業会計実務で実践され、また会計学の基本テキストでも取り上げられるCVP分析は、原価と収益の関係性(原価態様)が固定的かつ確定的であることを前提とした事後的な利益分析の手法である。これに対して1980年代まで、原価ないし収益を確率変数とする不確実性下における静学モデルとしてのCVP分析に関する研究成果が多数公表された。しかしながら、近年このようなCVP分析の理論的拡張をテーマとする会計研究が、内外の主要な学術誌に掲載されることは皆無である。 CVP分析が会計実務や会計教育の両面で必須の分析手法でありながら、それが学術的見地から等閑視されているのは、現行のCVP分析がもはや何ら検討すべき課題が見当たらない完成し成熟した分析法であるからではなく、従前のCVP分析研究における理論的進展が、当時の実務で要請された課題解決や事務処理能力(計算機器の能力)に即応したものではないため、ほとんど実務化されなかったからだと考えられる。 これに対して、本研究では、あらたに収益を確率変数の時系列である確率過程とおくことによって、従前の静学的なCVP分析を動学的な確率モデルに拡張し、管理会計上の有用性について検討することを目的としている。この際、近年管理会計および原価計算の領域で研究報告されている「原価態様の非対称性」という性質をCVP分析に導入することにより、確率的CVP分析をオプションベースの動学的確率モデルとして定式化する。 これと同時に、本研究では上述のような管理会計上のCVP分析の理論的拡張という議論を、企業価値評価モデルの一つである残余利益モデルに適用し、同モデルを非線形な確率過程モデルに拡張する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、企業内部における短期利益計画としてのCVP分析を、企業外部者による企業評価法である残余利益モデルに拡張し、その結果については、日本管理会計学会ならびに日本会計研究学会にプロシーディングを投稿するとともに、同学会において研究報告を行った。 日本会計研究学会のプロシーディングスでは、確率的CVP分析モデルをオプションベースの動学モデルとするという着想を、株式価値評価モデルの一つである残余利益評価モデルに適用することの理論的根拠について述べるとともに、学会報告ではプロシーディングスのモデルを用いたて、企業収益と株価との間にオプション価値と解釈される非線形性があるという実証結果について報告した。この非線形性とは、企業の収益性が高くなるほど株価の上昇率が大きくなるという性質として検証されたものであり、この結果は残余利益モデルをベースとしたOhlsonの線形情報動学モデルにおける線形性とは異なる知見という意義を有することを提唱した。 また管理会計学会では、確率的CVP分析モデルのオプション的性質について、原価態様の非対称性ないし原価の下方硬直性という視点から理論的に説明した。 さらに、上述の確率的CVP分析モデルとして拡張された残余利益モデルとは、投資意思決定モデルであるリアルオプションモデルの一種とも見られることから、日本リアルオプション学会において、インターネットビジネスを展開するネット事業者の会計データに基づいたモンテカルロ・シミュレーションの実行結果について報告した。シミュレーションの結果によれば、残余利益モデルそのものよりリアルオプションモデルとして拡張された残余利益モデルの方が、株価の説明力が高いことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、残余利益モデルとして拡張された確率的CVP分析モデルによる株式価値評価の測定精度を検証すること主たる研究課題となる。そのために、財務会計のアーカイバルデータを用いた実証的な統計分析を実施する。この際、わが国はもとより欧米ならびに東アジアにおける上場企業も研究対象とすることにより、証券市場ごとに評価上の差異が見られるかどうかについても注目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度の助成金については、概ね予算通りに使用できた。 ただし、次年度使用額21,504円が生じたのは、財務会計データベースを研究計画よりも早期に購入する必要生じたため、前倒し支払い請求を行ったことの余剰額として生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の物品費の一部に充当する予定である。
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