研究課題/領域番号 |
15K03770
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山地 秀俊 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (40127410)
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研究分担者 |
後藤 雅敏 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70186899)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共感性 / 労使交渉 / 最後通牒ゲーム / 左側縁上回 / fMRI |
研究実績の概要 |
労使交渉時における経営者側の心理状態を解明すべく、最初に実験室実験を行い、具体的には被験者が、PC上に設定された仮想交渉相手と最後通牒ゲームを繰り返し行った。するとアンケートで調査して共感性が高いと判断された被験者は、交渉相手に対して相対的に高い報酬を提示する傾向にあった。続いてfMRIを用いた脳実験で同様の実験を行った。同様にアンケートで共感性が高いと判断された被験者は交渉相手に高い報酬を提示したが、高い共感性を示した被験者は、脳賦活分析で左側縁上回(left supramarginal gyrus)といわれる脳部位が強く賦活していることが分かった。このことから脳内の左側縁上回が活発に賦活する人は共感性が高く、相手を慮る行動に出ることが判明した。 このことを労使交渉状況に当てはめると、共感性の高い被験者(経営者)は、賃金交渉時に交渉相手(労働者)の抵抗力を具に観察して、抵抗力が強い相手には比較的高い賃金を提示し抵抗力が低い相手には低い賃金を提示する傾向が認められると解釈できる。左側縁上回はまたアンケート調査との関連では、共感性と高い相関を持っていることが統計的に判明しているので、共感性の高い経営者は労働者の抵抗力を見抜いて労使交渉する可能性が高いために、逆に、ややもすると抵抗力の低い労働者ばかりを大量に雇用する可能性があることが伺えた。すなわち共感性の高い経営者は、労働者により高い賃金を提示する可能性もあるが、より高い賃金を支払わなければ仕事をしない労働者を雇用せずに、抵抗力の低い労働者のみを雇用する、すなわち、非正規雇用労働者をより多く雇用する可能性もまたあることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文を完成させていくつかの海外査読付き雑誌に投稿を試みているが結果はまだ出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は改訂を重ねて投稿を試みる予定である。 それとは別に、一般に経営意思決定を行う際の特徴的脳部位を特定して、今回の研究に反映させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
fMRI実験の経費が、少なくて済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
もし海外の学会に投稿している論文がパスすれば、発表のための出張旅費に一部を使いたい。もし叶わなかった場合には、いくつかの論文の英語校正に用いて、複数の論文を作成し、さらにはこれまで我々の研究領域になかった脳実験に関する1冊の英語本を作成するための経費として使う。
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