不動産リース取引の貸手である全リース会社(250社)と借手である一般企業(約250社)に対して質問調査票を送付し、不動産リース取引の実態、および新リース会計基準の運用状況、すなわちリース取引の測定方法に関してアンケート調査を行った。その結果からそれらを実証的に検証し、今までの規範理論の研究と合わせて、不動産リース取引を研究対象として,わが国における不動産リース取引の会計実務の特性を明らかにする。 サンプリング方法については、民間企業が保有する企業データベースから、借地権取引を行っている一般企業250社を抽出し調査対象とした。調査手法は、郵送調査を選択した。 借地権取引は、「権利金を支払い通常の地代を払う取引」と「権利金を支払わず相当の地代をリース期間にわたって支払う取引」とに分類される。理論的には、まず不動産リース取引が解約不能であるか否かで区別し、解約不能なリース取引であれば、リース期間の全キャッシュフローが確定し、各期のリース料の金銭債権・金銭債務が確定するので、借地権とリース料の現在価値との合計額を資産化・負債化すべきである。ただし、相当の地代を支払う場合には、金利水準に比べてあまりにも年率が高額であるため、リース料のうち資産化するのは、リース期間における各期の正常なリース料部分のみにすべきであることを提案する。 問1と問9のクロス集計の結果を見ると、制度会計に従いほとんど全ての企業が「オペレーティング・リース取引であるとして、リース料を全額費用計上している。」となっており、「借地権と正常なリース料部分のみの現在価値との合計額を資産化・負債化している」という企業は1社のみだった。この前者の会計処理方法は理論的には妥当ではなく、企業の経済活動を適切に会計処理上に写像できておらず、今後、制度会計上、検討の余地があることを指摘する。
|