研究課題/領域番号 |
15K03780
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
森 美智代 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (50220025)
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研究分担者 |
河谷 はるみ 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 准教授 (90399767) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日独医療改革 / DPC+出来高 / DRG/PPS / 「医療の質」の評価 / 公立病院改革 / 公的医療機関 / 社会法典 / 医療法 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究は、1)日独医療機関評価体制の構築、2)日独の包括医療費支払制度方式、3)日独の医療保険制度・国の医療政策・診療報酬計算が医療機関に及ぼした影響に焦点を絞って研究を進めた。その研究結果は、『税経通信』2017年3月号(税務経理協会)特別論文:「医療経営改善が及ぼした影響-日独医療経営改革を踏まえて-」に掲載した。 1)日独の医療機関評価体制の整備が医療現状にどのような影響を及ぼすかは継続調査する。2)医療経営に影響を及ぼす診療報酬計算の基礎は、日本の場合には、「包括医療費支払制度方式(DPC)+出来高制」、独の場合には「診断群分類別包括計算(DRG)/PPS」である。その計算手法は、いずれもアメリカの診療報酬計算方法を導入したものであるが、現在は、それぞれの国に適合する計算方式となっている。当該診療報酬計算方式は、医療機関の診療報酬計算に透明性と効率性の影響をもたらしていることが明らかになった。3)国の医療政策と保険者、被保険者、政府の間における資金の流れについて、①経営及び設備投資等への資金の流れ、②診療提供給付に対する資金の流れに焦点をあてて、日独の医療保険制度及び補助金を分析した。 本研究では、国の医療政策、医療機関への資金の流れをとおして、日独の医療改革の類似点と相違点を明らかにした。両国の医療政策は、高齢化社会に向けて病床数削減、在宅及びかかりつけ医療の促進、ジェネリック使用の促進、在院日数の縮小等、コスト削減という共通の政策がみられる。また日独公立病院の会計処理に共通する1つの特徴として挙げられるのは、「資本の部」における会計処理である。それぞれの医療機関は期間費用の削減と期間収益の上昇に努める一方、過去の損失は繰り越し、期間収益は内部留保して、資本的支出に充てるという共通した特徴がみられる。 以上、3つの観点から平成28年度の研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドイツの「医療の質」評価について、ドイツの医療機関の関係者の協力があったことから、「医療の質」の評価基準についての調査研究が、当初考えていたことよりも研究が進行した。当初計画していなかったドイツの共同経営組織の研究が進行した。 熊本県内の公立病院の「あり方検討委員会」及び「事業運営委員会」の委員をしていることから、現場関係者から決算書に関するインタビューが可能である。さらに熊本県の医療政策課に直接インタビューができるなど、本研究に関する情報が取得できる環境に恵まれたことが、当初の研究計画以上に進む結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
日独の医療改革が医療給付提供と財政の観点から医療政策が実施されているなかで、日独の医療政策の類似点とその相違点を探究し、日独の医療政策の医療機関経営への影響を決算書の分析をとおして明らかにする。 前述の日独医療政策のもとで、経営組織の経営改善が実施されるなかで、まず医療経営への影響に及ぼした要因について探究し、その上で医療政策と医療保険制度の観点から組織経営への影響を明らかにする。 日本の国公立医療機関の「資本の部」の会計処理について、各事例を通して、公会計から企業会計への移行に際して、どのような会計上の意味があるのか、また同様に補助金についての会計処理について分析する。 ドイツの公的医療機関の「資本の部」における会計処理がどのような会計上の意味があるのかについて考察し、なかでも公的医療機関の統合における連結決算書における会計上の課題について探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外からの研究協力者が本学へ訪問し、大学で講演をしてもらい、講演料を支払うためには、平成29年度の補助金が入る期間まで、平成28年度の予算を残す必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の補助金の残高は、海外からの講演者を平成29年度4月に本学へ招待して、講演してもらう講演料として支出した。
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