平成30年度は、以下に掲げる研究の成果を得ることができた。 (1)前年度に学会(全国大会)報告で取り上げた使用権モデルのフロー計算に関する代替処理方法について、更に深掘りした上で論文として取りまとめた。なお、本論文は、学会誌(査読付)に掲載された。本論文では、基準書・公開草案等の公表文書のみならず、議事録まで渉猟することによって、ASC842のオペレーティング・リース取引に係る年金法償却のロジックの変遷を丁寧に辿った。結果、公表文書上の文言の表面的な解釈に留まることなく、固定資産には一般的に認められていない年金法償却の妥当性を論ずるに至った。 さらに,学会報告時および査読時に頂戴したコメントを踏まえて,上記(1)で得た知見を多面的に検証すべく、当年度中に以下の研究に着手した。 (2)会計理論の観点から、年金法償却に関する文献研究。(3)税法の観点から、リース税制に関する文献研究(上記(1)の論文でも述べたように,ASC842は年金法償却の根拠として、①非金融資産の取得取引により生ずる資産・負債との異質性、②米国税法との整合性、の2点を掲げる。上記(1)の論文では根拠①を中心に検討したため、次に根拠②を検討対象とした)。(4)実務上の観点から、貸し手企業へのインタビュー調査(上記(1)の研究成果に基づき、借手の財務的弾力性を高めるというリース取引の機能を中心に聞き取りを行った)。 上記研究の一部については、次年度中の刊行が決定している。残る部分については、従来と同様に,順次学会報告を行った上で投稿を予定している。
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