研究課題/領域番号 |
15K03784
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
谷守 正行 専修大学, 商学部, 准教授 (90733824)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 管理会計 / 原価計算 / 顧客別原価計算 / 顧客関係性管理(CRM) / コストビヘイビア / リスク・リターン / 顧客行動分析 / 銀行管理会計 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,関係性に基づく原価への影響についての実態研究調査を以下の3つの観点で実施した。 1.装置産業的な「銀行」における費用構成の確認と原価計算状況を実態調査を実施。対象の国内銀行はりそな銀行,八十二銀行など地方銀行3行,愛媛銀行など第二地方銀行2行である。海外の銀行では,シンガポールのDBS銀行,OCBC銀行,UOB銀行などの実地調査を実施。 2.クラウド・サービスを中心にデータセンター・ビジネスを行う企業を実態調査した。対象は,さくらインターネット株式会社へインタビュー調査を実施。 3.「契約型ビジネス」の業態調査。対象は,通信キャリアの「かけ放題(通信し放題)」,食べ放題(バイキング)形式の飲食店,会員制ビジネス(コストコ等)の経営管理を管理会計の観点から調査検討。 以上の研究から,新しい原価計算のモデルを検討することができた。顧客の実際の取引量や消費量からなるコストドライバーは,コストビヘイビアが因果連鎖的であるとすれば,表面的なドライバーである。顧客が取引を行う(消費をもたらす)要因となるドライバーとは,顧客と企業との信頼感や契約内容などが背景にあり,それらをも説明変数とした多重回帰モデルにより顧客毎に必要とされる資産を見積り,その資産に投資し維持するに必要な費用が当該顧客の原価となるのである。以上の検討の一部は,会計学研究,産業経理にて論文報告した。 平成28年度は,実態調査を元に仮説モデルの検証を行う。実際にデータを利用可能な領域では,シミュレーションを行って関係性に基づく原価計算モデルをブラッシュアップする。その他,実際にアクションリサーチ可能な企業と調整を行い,実務への効果や運用上の課題を研究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関係性にもとづく原価計算の仮説モデルまでは作成できた状況であるが,具体的なモデルの対象の1つである銀行モデルの作成が遅れている。その原因は次の通り2点と分析している。 ・実際の企業データの取得が十分ではない。インタビューまでは問題なく調査が進むが,実際のデータ提供にあたっては,情報管理の観点から躊躇される企業が多い。ある程度は予想していたが,予想よりも少々時間がかかっている状況である。28年度は,代替手段として,顧客側である一般個人向けにアンケート調査を行うことも考えている。 ・1月29日発表の日銀のマイナス金利によって,実態のビジネスである銀行と顧客取引が大きく影響を受けた。顧客と銀行の関係性が今回のマイナス金利によって逆転している可能性があり,これまで通りの分析だけでは十分に推測することができない状況である。本件は,今後さらに関係性に影響を与えると思われるので,十分に注視していく必要がある。 ただし,それぞれに対する対応方法については考慮済みであり,期間内に研究成果を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り推進していく。ただし,モデルのブラッシュアップについては,アンケ―ト調査によるデータやオープン・データ(公開されたビッグデータ)をも活用していく。それにより,モデルはより一般化されるとともに,若干の遅れは十分に挽回可能である。 また,実際に企業へのアクション・リサーチについては,1つを選定して実際に調査研究を開始したところである。 予定通り,本年度中から来年度初には研究結果をまとめ,来年度には学会等にて報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーションの型番変更時期を待ってための,時期ずれによるもの。また,当年度内(3月)の海外調査について,次年度支出となったもの。
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次年度使用額の使用計画 |
ワークステーションについては次年度初に支出の予定である。 当年度実施の海外調査についての支出が次年度初に行われる予定である。
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