本研究の目的は,わが国サービス産業の収益性や生産性の向上に資するサービスに適した原価計算モデルを確立することであった。具体的には,関係性に基づくファイナンス型原価計算モデルの構築,実際の企業へのアクションリサーチによるモデル検証,研究成果の国内外への発信を行って,サービス産業に適した原価計算モデルを構築するものであった。 本研究では最初の計画通り,国内外の文献研究や実際のクラウドグサービスを行うIT企業の実態調査から,関係性に基づくファイナンス型原価計算の仮説モデルを構築することができた。次に,国内外のサービス企業の実態調査と,とくに複数の銀行を対象に当仮説モデルを用いたアクションリサーチによって具体的に検証を行うことで,モデルのブラッシュアップを図ることができた。その結果,金融サービスにおいては,活動基準原価計算(ABC)よりも本研究の関係性に基づく原価計算の方が業務や審査等の意思決定に格段に適合することが明らかにされた。 本研究の成果は,日本原価計算研究学会にて2件,日本管理会計学会にて2件(うち1件は学会奨励賞),そして国際学会(IABE)にて1件「Relationship-Based Costing」の報告を行った。さらに,金融関係の2冊の著書を上梓し,複数の雑誌にも寄稿した。また,本研究の関係性に基づく原価計算をよるサブスクリプション研究について,NHKのラジオ出演による解説や,独立行政法人国民生活センターの機関紙への寄稿の機会を得た。 以上の通り,本研究の価値は国内外の学会研究に貢献しただけでなく,低金利で経営の厳しい銀行や信用金庫等の金融サービスに対して,管理会計や原価計算の立場から実務面で貢献できたことにある。さらに,サブスクリプションに発展させて,様々なサービス企業へ貢献できるようにしたことと,国内外の消費者に対しても研究成果が貢献することを明らかにした。
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