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2015 年度 実施状況報告書

「両利き」事業部の組織特性およびMCSの設計と利用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K03789
研究機関法政大学

研究代表者

福田 淳児  法政大学, 経営学部, 教授 (50248275)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード両利き事業部 / 探索 / 活用 / パラドックス / マネジメント・コントロール・システム / 管理会計システム
研究実績の概要

本研究の初年度は,経営学や管理会計研究の領域における「両利き組織」(ambidexterity)における既存文献のレビューならびに企業数社へのインタビュー調査を実施した。
探索と活用(March, 1991)を同時に追求する組織は両利き組織と呼ばれる。本研究では,同一の組織単位内において同時に異なる組織学習が追求される組織(Simsek et al., 2009)を念頭において議論を行なう。従来の研究で,両利き組織は,いずれか一方のみの組織学習または戦略を展開している組織よりも,高い組織業績を示すことが発見されている(たとえば,He and Wong, 2004)。また,両利き組織の先行要因としては,環境の特性 (Gibson and Birkinshaw, 2004; Bedford et al., 2015)やトップ・マネジメントの行動的な特性(Lubatkin et al., 2006)などがあげられている。
このような両利き組織におけるマネジメント・コントロール・システムの設計や利用に関する研究は始められたばかりである。いくつかの例外的な研究もある。たとえば,Bedford (2015)の研究では,両利き組織では,診断的なシステムとインターアクティブなシステムの利用の相互作用が業績にポジティブな影響を及ぼしていることが発見された。しかしながら,これらの研究では,パラドキシカルなMCSの設計や利用がどのような経路を経て組織業績に結びついているのかについては,何も明らかにしていない。この点を明らかにすることが今後の課題であると考える。また,インタビュー調査から明らかになった点は,実務家の観点からは異なる組織学習のモードが必ずしもパラドキシカルものと捉えられていない点,予算が比較的頻繁に見直される傾向がある点が明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初提出した計画において,初年度は,探索と活用を同時に追求する両利き組織の組織特性およびMCSの設計や利用方法に関する経営学や管理会計領域の文献のレビューを行なうこと,また日本企業数社へのインタビュー調査を実施することを予定していた。
初年度は,この計画に基づいて,組織論や戦略論に関わる領域さらに管理会計研究を中心に広範な文献レビューを実施し,両利き組織の組織特性,その先行要因,また両利き組織の実践と組織業績との関係について従来の研究結果の整理を行なった。その結果,両利き組織の先行要因や組織業績との関係性については,ある程度一致した結果が得られていることが明らかになった。
しかしながらその反面,両利き組織においてどのような経路を経て組織業績が向上しているのかについては、これまでの研究で明らかにされていないことが明らかになった。MCSの設計が組織構成員または構成員間の認知また行動に与える影響を含め,どのような経路を経て組織業績の向上がもたらされているのかという点は,両利き組織のマネジメントを考える上で重要な論点であることが明らかになった。
また,予定よりも若干数は少なくはあったが,日本企業数社の事業部長や経理担当者へのインタビューも実施できた。これらのインタビューから理論とは必ずしも一致しないいくつかの洞察を得ることができた点は大きな収穫であった。
以上の諸点から研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

次年度以降の研究では,両利き事業部のマネジメントに影響を及ぼす組織特性およびMCSの設計や利用方法についてさらなる文献レビューを継続する予定である。さらに,両利き組織の特性を有した事業部の事業部長および経理部長などへのインタビュー調査を実施する予定である。
次年度以降は,これらの文献レビューの成果またインタビュー調査の積み重ねからえられた成果に基づいて,両利き事業部を取り巻く環境の特性,組織構造またMCSの設計や利用方法,および組織業績に関する仮説の設定を行なう予定である。特に,両利き事業部において、パラドキシカルなMCSの設計や利用が組織の構成員のレベルにおいてどのように調和されているのかを仮説レベルで明確に取り込むことが重要であると考える。この点については,次年度以降に行なうインタビュー調査においても明らかにしたい点である。MCSが提供するパラドキシカルなメッセージが組織構成員また構成員間の関係にどのような影響をもたらし,それがどのように組織業績につながっているのかというパスを明らかにすることが,両利き事業部のマネジメントを考察するうえで非常に重要な論点となる。これらの諸点についての仮説の設定を行ない,日本企業の事業部長を対象とした郵送質問票調査を実施する予定である。これによって、ケース研究が有していた結果の一般妥当性を検証することが目的であるとともに,両利き事業部におけるマネジメント方法についての理論を構築することが目的である。

次年度使用額が生じた理由

両利き組織について組織論や戦略論および管理会計研究領域など広範にわたる学問領域での文献レビューが必要となり,当初予定していた以上に時間を費やす作業となった。このため,企業へのインタビューが当初予定していた件数に届かなかったことが大きな理由である。また,東京近辺の企業へのインタビュー調査を優先的に行なったために,予定していたよりも旅費の支出が少なかった点も大きな理由の一つであると考える。

次年度使用額の使用計画

この領域はまさに研究が現在進行形の形で進んでいる。このため,次年度以降も,追加的な文献レビューを継続的に実施することが必要であり,図書の購入費用が必要となる。また,これと並行して,同時に異なる組織学習を追求するために組織内でMCSが提供するパラドキシカルなメッセージが,組織構成員また構成員間の関係にどのような影響をもたらし,それがどのように組織業績につながっているのかというパスを明らかにする上で,企業へのインタビュー調査を行うことが必要である。このための旅費また音声データの文字おこしのために支出を行なう予定である。さらに,次年度は両利き組織におけるMCSの設計や利用方法についての仮説の設定を行なった後,それらの仮説に基づいて,郵送質問票調査を実施する予定である。このための通信費、印刷費が必要である。次年度にはアメリカでの情報収集を行なう予定であるので,そのための旅費が必要となる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Organizational Learning via Strategy Formulation and the Role of MCS in That Process: The Case of Kikkoman Corporation2016

    • 著者名/発表者名
      Junji Fukuda
    • 雑誌名

      Japanese Management and International Studies Vol.13: Management of Innovation Strategy in Japanese Companies

      巻: 13 ページ: 159-175

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2017-01-06  

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