研究課題/領域番号 |
15K03791
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
諸藤 裕美 立教大学, 経済学部, 教授 (20335574)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マネジメント・コントロール・システム / トヨタ / 情報共有 / 国民文化 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的として示した、1)海外拠点のMCS(マネジメント・コントロール・システム)を本国のものと同一とするか、海外拠点の特性に合わせたものにするか、2)海外拠点間の情報共有を促進するMCSをいかに設計・運用するのか、という点について、1990年代初頭以降の研究蓄積が十分でない、日本企業における原価企画の海外移転に焦点を当てて、理論的研究・インタビュー調査を行った。 既存研究を踏まえ、トヨタにおいて、CE(プロダクト・マネジャー)、技術部・技術部内の原価企画推進部署である製品原価企画部(当時)・経理部内の原価企画推進部署である原価改善部の海外拠点駐在経験のある管理者・従業員、海外拠点との密なやり取りを行っている技術部管理者にインタビュー調査を行い、1)北米拠点における現在の原価企画プロセス、そして、2)北米拠点において、現地人従業員が高い割合を占めていること、3)原価企画に必要なチームワークやアイデアの創出を可能とするトヨタの組織文化を浸透させる仕組みとして、方針管理、業績測定などが存在すること、4)採算成立性検証ないし目標原価と見積原価の比較を行う複数のフェイズの会議体に向けて、国内拠点と海外拠点との間で密な連携がなされていること、5)その連携には様々な媒体が用いられているが、コスト・手間のかかる対面コミュニケーションが重視されていることを明らかにした。 また、前年度研究から得た問題意識を踏まえ、販売拠点が複数国にわたる車種において、各国の顧客ニーズをどのように収集しているのかについてもインタビューを行い、事実認識を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に示した平成27年度の研究実施計画や前年度の実施状況報告書で示した今後の推進方策のうち、海外拠点における業績管理等のMCS、日本国内本社と海外拠点間の情報共有のあり方についての既存研究サーベイ・インタビュー調査は遂行し、成果報告を行うことができた。一方、販売部門とディーラーの間の情報共有のあり方については、若干の文献研究は行ったものの、年度後半、出張が難しい状況にあったため、予定していたインタビュー調査を行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
自動車販売方法として、店頭販売等のウェイトが高まってきたこと、また、ディーラーの収益源として、新車販売以外のアフターサービスが高い割合を占めるようになってきたことから、販売組織・販売員の業績管理がどのように従来と異なってきているのか、地域・国の特性によりそれらがどのように異なるのかを明らかにする。メーカーからディーラーへのインセンティブ契約の変遷についても検討する。 また、注文・生産にかかわるメーカー・ディーラー間のシステム以外のIT情報を、利益獲得を可能とする製品・サービス開発にどのように結び付けることができるかについて現状とあるべき姿を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月の学会における成果報告の準備に当初想定した以上の時間がかかったことから、夏季休暇期間中の海外拠点へのインタビュー調査を断念した。さらに、秋に受けた手術の回復が当初想定した以上に時間を要したことから、数か月間国内外の出張ができなかった。そのため、旅費の実際支出額が予定支出額より低くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は国内外拠点への調査を予定しており、そのための旅費や研究協力者等への謝金が必要となる。また、組織間関係にかかわる詳細なデータ入手への支出が必要となる。
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