本研究は、販売拠点がグローバル化している企業において、マネジメント・コントロール・システム(以下MCS)はどのように設計・運用されるべきかを明らかにすることを企図したものである。分析の対象は自動車産業に限定した。 まず、1920年代以降の日本の自動車ディーラー組織の特徴について歴史的に跡付け、メーカー・ディーラー間の相互コミットメントが大きいこと、近年店頭販売にシフトし、顧客ニーズの新たな収集方法が求められることなどを指摘した。 販売拠点のグローバル化という現象に対し、1)海外販売拠点のMCSを本国と同一のものとするか、海外拠点の特性に合わせたものとするか、2)複数国・地域の販売拠点で販売される車種に関する顧客ニーズの収集をどのようにするか、という点について、トヨタの事例をもとに明らかにした。1)については、インセンティブ・システムは日米で異なるものの、海外販売拠点の従業員についても、トヨタにあった人を採用する仕組み、社会化する仕組みが存在することが明らかとなった。2)については、主要国・地域で顧客ニーズ調査を行うこと、国・地域間で異なるニーズが存在する場合の調整方法は車種により異なること、などが明らかとなった。 また、MCSやオペレーショナル・コントロールの幾つかの側面において、ITが用いられていることが明らかとなった。JITの販売組織への拡張、同システムによる各販売店の仕入れ担当者への最適在庫数提案、優れた販売員の行動をベンチマークしたプロセスに関する他の販売員へのITシステムによる指示、主要成功要因の分析、顧客ニーズの把握につながる情報収集などにITが用いられていることが明らかとなった。
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