本研究課題は、わが国企業会計審議会が平成26年に改訂監査基準に導入した「特別目的の財務情報に対する監査」を中心に、「多様な監査・保証業務の形態が利害関係者に与える保証効果への影響に関する国際的・実証的研究」をテーマとし、国際監査基準(ISA)800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」とISA 805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」のわが国における実施可能性とそのあり方、ならびに導入実態を明らかにすることを目的とした。 平成27・28年度においては、職業会計士が多様な財務情報の監査・保証業務をどのように提供し得るのか、また提供しているのか、について、監査及び証明業務で先行するアメリカを中心に検討した。特に特別目的の財務情報の監査・証明業務を規定する公開企業会計監視委員会(PCAOB)とアメリカ公認会計士協会(AICPA)による基準のみならず、任意監査・証明業務を規制するAICPAによる実務指針がどのように実務に適用されているのか、を明らかにした。 平成29年度においては、わが国で当該改訂監査基準に基づいた特別目的の財務情報の監査が、どの程度導入されているのかについて、日本公認会計士協会の協力を得て実態調査を行ない、日本会計研究学会スタディ・グループ報告の一部に反映させた。さらに当該特別目的の財務情報の監査をわが国同様に導入しているドイツにおける実態について、連携研究員の協力を得て明らかとした。 最終的に、先行する諸外国に比して、わが国での任意の監査・証明業務に関する実務が、これらの基準化によってもそれほど導入・定着していないことが確認されたため、今後の実務指針の一層の充実を含めた対応の必要性を提言した。
|