研究課題/領域番号 |
15K03801
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川原 尚子 近畿大学, 経営学部, 教授 (40511184)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 企業の社会的責任(CSR) / 情報開示 / サスティナビリティ(持続可能性)情報 / 社会環境影響 / インドネシア / 社会環境報告 / 統計分析 / 社会影響評価(SIA) |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果を論文3本(内1本英文)にまとめ公表した。(1)「インドネシア上場鉱業企業の持続可能性報告の現状と課題」(商経学叢第63巻第3号、pp.43-66)ではインドネシアの上場鉱業企業における持続可能性報告を分析し、会社法等での制度的な開示の要請がある中での情報開示の現状と課題を明らかにした。(2)「インドネシア企業の社会環境影響情報の社会的便益と今後の課題」(商経学叢第64巻第1号、pp.1-16)ではインドネシア企業が社会や環境への影響を開示することについてもたらされる便益について、インドネシア人に対するインタビューやグループディスカッションによる調査を行い、インドネシア企業のどのような社会環境影響情報に関心があるかを分析した。(3)Current Trends and Challenges in Sustainability Reporting Practices in Japan - Literature Revuew(Shokei-gakuso, Journal of Business Studies 64(2)、pp.113-142)では、わが国の持続可能性報告の最近の傾向と課題について文献研究を通じて明らかにした。持続可能性報告が統合報告へと移行する中で、実務的な3つの課題が残されており、その改善にあたり企業努力、経済的インセンティブの認識、市場規律、持続可能性情報開示の制度化の4つの課題を検討した。 この他、インドネシアの研究協力者との共著'Japan Investment and Indonesia Sustainability Reporting: An Isomorphism Perspective'は国際ジャーナルのSocial Responsibility Journalに掲載が決定している (SRJ-04-2017-0062.R2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシアを含む新興国企業の社会環境情報開示に対する一般投資家の選好に関する調査を計画しているが、実施に時間を要しておりやや遅れている状況である。ステークホルダーにとっての社会環境情報の価値を総合評価するため、統計的手法である表明選好法の選択実験を検討している。インドネシア現地での市場調査に当初の予想を越えた困難が伴うことから、情報開示に対する現実の人間の意思決定データの収集が困難な状況にあるため、このような選択実験による仮想的な状況を設定して評価分析を行う予定である。この選択実験による情報の貨幣価値による推計や選好体系を明らかにするため、その事前段階の調査として、インタビューやプレ調査を当該年度で行ってきている。また調査票の作成に必要な文献研究も行ってきており、その成果を論文に取りまとめている。しかし、先行研究が非常に少なく、調査内容の確定、統計的手法の選定、調査票作成にあたり、統計的手法の専門家である研究協力者との調整と打合せに予想以上に時間を要している。既にプレ調査を実施できたので、その結果を踏まえて、本調査を今後実施する予定である。ただし、調査費用、分析時間も相当程度かかることが予想され、国際ジャーナルへの原稿受理など最大限の成果を出すべく調査票の設計を慎重に行っており、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の3年間を1年延長し、その中で、本研究課題の解明を行っていく。本研究課題が社会環境情報開示の選択実験による価値評価という、先行研究が少ない分野の研究であるため、選択実験に関連した経営分野の先行研究を十分に参考にしていく。また先行研究での統計的手法の適用内容や分析手法を吟味し、その内容について統計的手法の専門家との打合せを綿密に行っていく。調査票作成と調査実施において、プレ調査よりも標本数を多くし、実行可能で効果的な選択実験の調査票で調査したいため、ウェブ調査の専門会社を利用しつつ、確実にデータ収集を行っていく。本調査の結果の分析と論文執筆を行い、国際学会で発表、また国際ジャーナルに投稿していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の解明の最終段階である、インドネシア企業の社会環境情報のステークホルダーによる総合的評価を行うため、統計的手法の表明選好法の一つである選択実験による調査を実施する予定である。日本の一般投資家向けにインドネシアを含む新興国企業のへの投資情報についてのインターネットを利用した調査を行う。この調査のため、ウェブ調査に精通した専門会社に、調査票のウェブ画面設計、モニターへの調査実施とデータ改修の一部を委託する予定である。広範なデータ収集と分析、ウェブ調査特有の画面設計などに比較的多額の資金を要する。このような調査を外部に委託する費用として、次年度使用額を留保している。なお次年度にウェブ調査実施に全額を使用していく予定である。
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