歴代の国際会計基準審議会(IASB)メンバーの専門的特性を整理し、代表的な公式見解やスピーチなどからこれまでのIFRS開発との関わりの調査を進めた。とくに、IASBメンバーの専門的特性の1つである国や地域の属性が、IFRSの基準開発に及ぼす影響の有無やその内容などについて聞き取り調査を実施した。IASBのボード会議などの議事録は、近年はあいにく作成されておらず、要約整理した資料などを援用しながらデータベースを作成している。 アメリカの証券取引委員会(SEC)は、委員長を含む5名のコミッショナーで構成されている。SECのコミッショナーは大統領による政治任用の代表例でもある。しかし、トランプ大統領が就任後、2017年5月にようやくSEC委員長が任用されたものの、残るコミッショナー4名のうち2名は任用されない状態が続いた。この間のコミッショナーの欠員状態のもとでは、IFRSの受け入れに関わる規制措置はもとより、金融規制への対応は停滞していた。2018年1月にようやく2名のコミッショナーが任用され、5名のコミッショナー体制が整った。 SECの5名のコミッショナー体制が整った後、SECを訪問して聞き取り調査を実施するとともに、資料および情報収集に努めた。SECコミッショナーなどの公式見解やスピーチなどに関わるデータベースをより完全なものにするとともに、SEC主任会計士室の歴代の主任会計士について調査・整理した。主任会計士の専門的特性の一部と政治的特性に関する情報は、SECに情報提供の手続きを取って順次作業を進めている。 これらの調査結果などを踏まえた研究成果の一部(アメリカの会計制度設計における政治任用などの政治ファクターの影響)は、2018年9月に開催される日本会計研究学会第77回全国大会の統一論題において報告することが決まっている。その論文は『會計』誌に掲載される予定である。
|