研究課題/領域番号 |
15K03808
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
異島 須賀子 久留米大学, 商学部, 教授 (20336069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 会計士監査 / 自由市場 / 規制市場 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究の前提となる会計士監査の意義を演繹的に説明する経済理論およびそれに関連する先行研究を渉猟し、自身の過去の研究業績と突き合わせて、研究成果の確認とブラッシュアップを行った。具体的には、情報の非対称性を前提に、企業の財政状態や経営成績等に関して情報優位にある経営者と情報劣位にある株主や投資者等の外部者とのゲームを想定し、かかるゲームにおいて各プレイヤーにとって、会計士監査が如何なる意義を有しているのかを理論的に論究した。株主と経営者をプレイヤーとしたゲームを想定 すると、会計士監査は、株主の立場からは経営者に対する「モニタリング」として、経営者の立場からは株主に対する「ボンディング」としての意義を析出した。また、経営者と投資者をプレイヤーとしたゲームを想定すると、会計士監査は、経営者の立場から投資者に対する「シグナリング」の意義を明らかにした。 また、本年度は、理論研究ばかりでなく、歴史的事実に基づく実証研究も行った。各種資料や先行研究に基づいて自身の過去の研究業績でとりあげた事例およびその分析結果について批判的な視点から再検討した。 研究計画書では自由市場のみを研究対象とする予定であったが、本年度は、監査目的の多様化に対応して2014年2月に改訂された監査基準を吟味し、規制市場において規制(本年度の研究対象は2014年の改訂監査基準)が変化するとどのような影響や問題が生じるかについても新たに論究した。この研究成果は、学会報告(日本監査研究学会・第38回西日本部会)および学会誌(「監査意見としての適正性と準拠性」『現代監査』第26巻34-42ページ)において公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、本年度は自由市場についての研究に特化する予定であったが、規制市場について規制(監査基準)が変化することによる影響や問題についても論究し、その研究成果を学会で報告したり、学会誌で論文が掲載されるなど、当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目である平成28年度は本年度に論証した「自由市場における会計士監査の意義と機能」が規制市場に移行したことにより変容したか否か、変容したとすればどのように変容したのかについて研究する。規制市場における会計士監査の意義を理論的に明らかにするとともに、自由市場から規制市場に移行したことにより、株主、経営者、投資者などの経済合理的なプレイヤーの会計士監査に対する意義が変容するか否かについて考察する。規制市場においては、基準設定機関や規制当局などの会計士監査の規制主体もゲー ムのプレイヤーとなり得る。 また、平成28年度も学会・研究会報告を行うとともに、それらをとりまとめて学会誌等に学術論文として投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は先行研究の渉猟と自身の過去の研究業績との比較検証を中心に研究活動を行ったため、当初予定したほど、他の地域の研究者や公認会計士等の実務家との意見効果、学会・研究会報告の機会をもてなかった。そのため、当初予定したよりも旅費が少なくなるなど、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額145,106円の使用計画は次のとおりである。物品費95,106円および旅費50,000円とする。なお、物品費は研究者や実務家との意見交換や研究会等での発表の際に使用するための小型プロジェクターの購入に充てる予定である。
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