研究課題/領域番号 |
15K03809
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研究機関 | 九州情報大学 |
研究代表者 |
木下 勝一 九州情報大学, 経営情報学部, 教授 (40018643)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 欧州IAS命令 / エンフォースメント / IFRS / 会計統制法 / 欧州の分権型モデル / ドイツの公私協働型モデル |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ドイツの会計規範形成のエンフォースメントに関する研究を行い、その決定的なエポックとなったのは、22002年に発表された欧州IAS命令であったことを確認した。この欧州IAS命令で、IASB版の国際財務報告基準(IFRS)を欧州法として承認する欧州版IFRSのエンドースメントメカニズムが構築されたが、同時に、本稿が注目している欧州版IFRSのエンフォースメントメカニズムの形成についても提唱された。 2002年の欧州IAS命令を受けて、ドイツは、2004年に、会計法改革法(Bilanzrechtsreromgesetz/BilReG)と会計統制法(Bilanzkontrollgesetz/BilKoG)という2つの法律を成立させ、施行後、10年余が過ぎた。この欧州法からドイツ法への継受という欧州版IFRSに関する法行為は、ドイツでは、欧州版IFRSに関する規範の定立(Normsetzung)と規範の執行監視(Normdurchsetzung)として概念把握されている。後者の規範の執行監視が、英米法で、エンフォースメント(enforcement)と呼称されているものである。 平成27年度の研究では、2002年の欧州IAS命令で、エンフォースメント機関の創設が提起されたこと、そして、その設置形態については、加盟各国がエンフォースメント機関を設置するという提案がなされたことを考究した。この欧州IAS命令の提案は、欧州における分権型のエンフォースメントメカニズムの構築をめざしたものであって、欧州の中央集権型を提案したものではなかった。この結果、ドイツにおいて、ドイツ財務報告エンフォースメントパネルと連邦金融サービス監督機構の二段階方式による公私協働モデルが2004年の会計統制法で導入されたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、4年間の研究計画にもとづき、まず、初年度である平成27年度の研究として、2002年の欧州IAS命令の内容を欧州の立法資料を読み解くこと、その方向性を確認することを中心にして進めた。その結果、欧州のエンフォーメントメカニズムが、欧州における単一の中央集権的なエンフォースメントを構築することでなく、欧州の多様性を前提とした、欧州加盟国のそれぞれの事情にあわせた、分権型のエンフォースメント機関の設置を要請したことを、平成27年度の目標とした。結果的に、平成27年度は、この研究目標をスムーズに達成でき、研究成果を所属する大学の「九州情報大学論集」に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、引き続き、欧州のエンフォースメントメカニズムの研究を進めていくとともに、とくに、ドイツの公私協働型エンフォースメントの仕組みについて、ドイツの憲法秩序との関連での正統性問題を究明していく予定である。この研究によって、私的な自治にもとづくドイツ財務報告エンフォースメント機関の規制が公的規制機関である連邦金融サービス機構によって法的に監督されていることの、公法上の根拠について、明らかにしていきたい。このために必要な学術書の収集を引き続き行うとともに、公私協働論に関する制度研究を系統的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究計画で、研究テーマに関する欧州とドイツの関連図書を重点的に購入した点では、予定した通りであった。しかし、調査旅費ついては、公務と重なることが多く、日程の調整がつかなかった結果、情報収集のための実施計画を遂行することができず、執行残が生じた。平成28年度の使用額が増えることとなったが、計画的な支出を行う予定で、研究に取り組みたいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、引き続き、研究テーマに関連した欧州とドイツの図書購入、関係の和書の購入に重点的に使用するとともに、研究テーマ関連の情報収集のために、大学図書館、国会図書館、学会・研究会等の関係部署での資料、ヒヤリングを行うために、必要な出張計画を実施する。
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